また、違法行為を減らすのは、「規制ではなく、違法行為がバカバカしくなるほどの手軽で便利な合法サービスの存在しかない」と音楽業界関係者は口を揃える。この要件を満たすSpotifyはスウェーデン発祥ということもあって、「海賊(ヴァイキング)の末裔が海賊を退治した」といわれており、「欧米では違法行為が大幅に減っている状況」(山口氏)だという。
国内は「雨後の筍」状態
Spotifyは年内、早ければ10月にも日本でサービスを開始するという。国内では既に様々な企業が音楽ストリーミング事業を始めている。その多くが月1000円程度の支払いで、クラウド上にある数百万の曲を聴けるというSpotifyと似たモデルだ。
なかにはこんな「大物」もいる。「KKBOX」は今年6月1日に日本でサービスを開始したが、実は台湾、香港、マレーシア、シンガポールで1000万人を超えるユーザーを抱える、アジア最大の音楽サービス企業だ。04年に台湾でサービスを開始したが、将来性を感じたKDDIが10年に買収していた。「日本が終着点ということではなく、今後は東南アジアなどを狙っていく」(KKBOX・八木達雄マネージングディレクター)という。
12年7月にソニーが国内でサービスを開始した「Music Unlimited」も既に世界19カ国でサービスを展開している。
一方、いわゆる「ガラケー(ガラパゴス携帯電話。日本独自の携帯電話)」への配信を主たる事業としていたレコチョクが、スマートフォン対応で始めたストリーミングサービス「レコチョクBest」は、日本の大手レコード会社が出資している「強み」を活かし、「徹底してガラパゴス化し、日本人の趣味・嗜好に合わせたサービスを展開していく」(山﨑浩司常務)方針だという。
ソーシャルゲーム「モバゲー」を主力とするDeNAが運営する「Groovy」も国内市場がターゲットだ。「スマホで何をするか調査したところ、ゲーム以上に音楽が聴かれていた」(島田智行エンターテインメント事業本部長)こともあり、異業種ながら参入を決めた。定額制ではなくチケット制で、99円で17曲聴く形態だ。
ストリーミングサービスが本格化すれば本業であるCDレンタルへの影響が懸念されるツタヤ(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)も参入を検討しているという。
しかし、現在国内でストリーミングサービスが流行しているとはいえず、海外の「熱狂」ぶりと比較して温度差を感じずにはいられない。なぜ国内では盛り上がりに欠けるのだろうか。