2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2013年6月25日

 今後、日本でストリーミングサービスが定着するか否かは「レコード会社の対応」によるところが大きい。Spotifyが成功した理由のひとつに海外のレコード会社の協力があったことは既に記したが、現在国内でサービスを開始しているストリーミング事業者に、国内レコード会社が積極的に協力しているとは言い難い。

成功の鍵握るレコード会社の対応

 国内事業者のストリーミングサービスを体験してみるとすぐに分かるが、国内有名アーティストの曲が少ない。日本人は洋楽より邦楽を聴く人が多い。国内でストリーミングサービスが定着するか否かは、楽曲提供を決めるレコード会社の対応如何といっても過言ではない。

 ここでひとつの疑問が湧く。なぜ国内レコード会社はストリーミングサービスへの楽曲提供に二の足を踏むのか。それはレコード会社にとって最もおいしいCD販売とカニバリゼーション(共食い現象)が発生するからだ。CDは「再販売価格維持制度(定価販売の義務付け)」と「特約店制度(レコード会社とCD販売店の契約)」によって競争から守られている。利幅も大きく、この「利権」を最大限活かしたいと考えるのはある意味当然だ。

 レコード会社のCD「利権」を守る動きは今に始まったことではない。日本はアップルのダウンロードサービスiTunesが先進国で唯一失敗している国である。「アメリカでは有料音楽配信に占めるiTunesの割合が7割以上あるのに対し、日本では長らく1割にも満たなかった」(関係者)」。日本にしかない、破格でCDを借りることのできるツタヤなどのCDレンタル店の存在も大きいが、国内レコード会社が日本の有力アーティストの楽曲提供を拒んだことも大きい。

衰退する国内市場
目立つAKB48

 ストリーミングやダウンロードなどが失敗したとしても、CDが売れ、アーティストや作詞・作曲家、スタジオなどの音楽関係者が潤い、人々を熱狂させるようなヒット曲を生み出す体制が整っていればよいが、現状そうなってはいない。むしろ国内音楽市場の衰退は深刻である。

 CD、DVDなどの音楽ソフト生産額は1998年の6074億円をピークに減少を続け、2012年は3108億円となった。市場規模の縮小は、レコード会社やスタジオなどの制作現場を直撃する。経営悪化によりコスト削減が行われ作品の「質の低下」を招く。これが更なる販売不振へと繋がる「負のスパイラル」へ入り込んだ。

 また、これまでレコード会社が主に担っていた若手アーティストの育成が資金面から困難になった。実際、12年のアルバムCD売り上げトップ10(オリコン)はミスターチルドレン、桑田佳祐ら10年以上前にデビューしたアーティストとAKB48、嵐といった「アイドル歌手」が独占した。アイドル歌手が悪いとはいわないが、明日の日本を背負って立つアーティストが育っていない現状は深刻である─。


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