国内音楽市場の再生はまったなしの状況を迎えている。それでもなお「業界全体の発展を考えることができないレコード会社には期待できない」という声がある一方、「着実にレコード会社の姿勢は変わってきている」という声も聞かれる。
「このまま抵抗し続けたところで、音楽業界が成長する可能性は低いこと、海外ではストリーミングの発展でCD販売が落ち込まなかったこと、違法ダウンロード対策がしっかり整っていること」(関係者)などがその理由だ。
レコード会社の「変化」はこんなところからも窺い知れる。違法ダウンロードが跋扈する場として長らくレコード会社から「敵視」されていたYouTubeへの楽曲提供が「昨今急増している」(グーグルでYouTube事業を統括する平井ジョン氏)のだ。大物アーティストのオフィシャルチャンネル開設も相次ぎ、今年に入ってからもミスチル、B’zらがオフィシャルチャンネルを開いた。
期待される空気読まぬ行動
ストリーミング事業者は再生回数に応じて、権利者(レコード会社、アーティスト、作詞・作曲家など)にライセンス料を支払う。Spotifyもこれまで500万ドル以上を支払った。だがライセンス料だけでは、日本の音楽市場の不況を吹き飛ばすほどの力はない。権利者はライセンス料を受け取るだけでなく、ストリーミングをショーウインドーに見立ててのグッズ販売やコンサートへの呼び込み、海外展開など新たなビジネスの開拓が求められる。
実はコンサート市場はソフト市場と反対に伸びている。また、複製しにくいストリーミングサービスを利用すれば海外へも進出しやすくなる。中国などの知的財産権の概念が浸透していない国でのCD販売は「海賊版のマスターを渡すようなもの」(前出の山口氏)で、レコード会社が消極的であったのも頷ける。
レコード会社をはじめ国内音楽業界はストリーミングサービスのシナジー効果を上手く活用することができるのか。海外に目を向けると、5月にはグーグルが、6月にはアップルがストリーミングサービスへの参入を発表した(ただしアップルはiTunesとのカニバリを避けるためラジオ型に留めている)。
世界がストリーミング対ダウンロードの攻防へと変化しているなかで、日本だけがCDに固執し続け、ストリーミングサービスを排して成長することはできないだろう。
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