2023年2月5日(日)

Wedge OPINION

2023年1月20日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 岸田文雄首相の〝外遊冬の陣〟が終わった。一定の成果をあげたようだが、もどかしい印象もぬぐえなかった。期待されたウクライナ訪問が実現しなかったためだろう。

欧米歴訪した岸田首相だが、G7議長国としてやるべきことは残されている(AP/アフロ)

 主要7カ国(G7)サミット首脳の中で、ゼレンスキー大統領とひざ詰め会談を未だ行っていないのは、岸田氏だけだ。今回の訪米歴訪は、そうした状況を解消するチャンスだった。諸般の事情がそれを許さなかったのはやむをえないとしても、国内事情を考えると日程はますます窮屈になってくる。

 キーウを訪問できないまま、5月の広島サミットに議長として臨むのか。そうした最悪の事態だけは避けなければならない。

避けられなかった防衛予算増額

 首相のウクライナ訪問問題の前に、今回の外遊について触れたい。

 首相が訪米を見据えたタイミングで、安全保障戦略の改定、防衛予算の大幅増額を決断したことに対する見方は分かれる。「日本とインド太平洋地域の平和に寄与する」(産経新聞、1月15日「主張」)という好意的な評価から、「国民的議論のないまま同盟進化にひた走る」(朝日新聞、1月15日「社説」)などの批判まで、侃々諤々(岸田首相)ともいえるさまざまな議論がなされている。しかし、首相にしてみれば、以前からの懸案を積極的に解決したにすぎないだろう。

 日本を取り巻く脅威が高まる一方のなかでは早晩、反撃能力(敵基地攻撃能力)を保持し、防衛予算を手厚くすることは避けられなかった。中国、欧州連合(EU)などをはじめ国防予算を増額する国が相次いでいる事実は日本だけがそれを抑制していいのかという疑問を生じさせる。

 韓国を例にとってみれば、その一般会計予算が2兆7000億円程度だった1988年ごろ、日本の防衛予算は約3兆7000億円前後にのぼっていた。先方から見れば、自らの国家予算を上回る防衛予算を日本が計上していたわけで、外務省の韓国専門家が「韓国の警戒心を掻き立て反日感情につながらなければいいが」と気がかりな表情で漏らしたのを覚えている。

 その韓国の国防費が2023年度は日本円で5兆9000億円。前年度から1兆5000億円と大幅に増えた日本の6兆8000億円(予算政府案)には及ばなかったが、日本の22(令和4)年度の防衛費は上回った。

 日本の防衛予算がいかに抑制され続けてきたかを明確に示す事実だ。  

 尖閣諸島での中国の度重なる領海侵犯、北朝鮮の相次ぐミサイル実験など今日の厳しい国際環境を考えれば、防衛予算が今の水準にとどまることが許されないことは、理屈抜きで多くの人が理解できよう。


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