2023年1月30日(月)

Wedge OPINION

2022年12月22日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

  「国防の本義」という時代がかった見出しが躍っていた。

 敵基地攻撃能力を含む安保・防衛政策3文書の閣議決定を報じた新聞記事だ。相応の武力と外交の組み合わせによって戦争を避けることこそ、その持つ意味だと、大正期の軍縮会議全権の語録として紹介されていた。

安保関連3文書閣議決定後の岸田首相の会見(代表撮影/ロイター/アフロ)

 昭和期以降、この言葉は、戦争を謳歌する軍国主義、国家総動員体制の代名詞になる。

 一世紀を経て、あらたな脅威に対抗するための予算増額の論評にあたって、「国防の本義」が再び登場するというのだから面白い。

 軍人臭がする一言半句が防衛費増額を糾弾する勢力につけ込まれないかと心配したくもなるが、防衛費の大幅増額に踏み切った岸田文雄首相は、国民が共感しやすい「令和の国防の本義」を打ち出してほしい。

100年前の「国防の本義」は軍事・外交の両立

 12月17日の読売新聞1面

 政治部長の署名入り記事は、「反撃能力は日本への攻撃を躊躇させる〝伝家の宝刀〟」として、ちょうど100年前に首相を務めた加藤友三郎海軍大将の言葉を引用している。

 「国力相応の武力を整え、外交手段によって戦争を避けることが国防の本義なり」――。

 この文章は、首相就任の1年前、ワシントン軍縮会議における全権大使として主力艦制限を受け入れた際、海軍省に送付した進言といわれている。武力で他国を屈服させるのではなく、国力に見合った武力と外交、つまり抑止力によってあくまでも戦争を避けることこそが「国防の本義」という考え方だ。

 こうした思想は後々まで引き継がれ、日独伊3国軍事同盟に反対した山本五十六連合艦隊司令長官ら穏健な勢力の精神的支柱のひとつとなった。


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