政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は11月22日に報告書を岸田文雄首相に提出し、その中で反撃能力について「保有と増強が抑止力の維持・向上のために不可欠」と明記した。また、自民・公明両党が反撃能力の保有を容認する方向で最終調整に入ったとの報道もあり、2022年末に改訂される国家安全保障戦略などに反撃能力の保有が明記される可能性が高くなった。
報道では反撃で使用するミサイルとして陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾を改良した対地攻撃誘導弾、ノルウェー製の空対地ミサイル(JSM)、米国製の空対地ミサイル(JASSM-ER)、米国製のトマホークミサイル、今後研究・開発する極超音速誘導弾などが報じられている。また、ミサイルを発射するプラットフォームとしては、地上の発射機、航空機、水上艦艇および潜水艦が候補と言われている。
確かに、反撃能力を保有するためには長射程の対地攻撃ミサイルおよびミサイルを発射するプラットフォームなどの「ハード」が不可欠だ。しかし、「ハード」が揃っていれば効果的な反撃能力を保有していると言えるのだろうか。
制約を抱える反撃能力
有識者会議の報告書に明記されたように、日本が反撃能力を保有する目的は抑止力の維持・向上であろう。もし日本が核保有国であれば、相手国は日本を攻撃すれば「反撃を受けて耐え難い痛みを被る」と考えて日本への攻撃を思いとどまる可能性は高い。しかし、日本が反撃に用いるミサイルに搭載できるのは通常弾頭だ。
通常弾頭のミサイルで相手国に「耐え難い痛み」を与えるためには極めて大規模な反撃が必要となり、日本にとっては実現性に乏しい。したがって日本の反撃能力には、相手国に対して「日本を攻撃しても、反撃を受けて日本に対する攻撃の目的を達成できない」と思わせる効果を通常弾頭で与えることが求められる。
しかし日本では、反撃能力の発揮に関して制約が加えられる可能性がある。制約の一つは反撃目標に関する制約だ。政府は11月25日、反撃能力の行使対象を「軍事目標」に限定する方針を与党に示したと報じられている。