2022年11月28日(月)

21世紀の安全保障論

2022年10月11日

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勝股秀通 (かつまた・ひでみち)

日本大学危機管理学部教授

1983年に読売新聞社入社。93年から防衛問題担当。民間人として初めて防衛大学校総合安全保障研究科(修士課程)修了。解説部長、編集委員などを経て、2016年4月から現職。

 事前通告もなく、北朝鮮は10月4日朝、「火星12」とみられる中距離弾道ミサイルを発射、ミサイルは青森県の上空を通過、過去最長となる約4600キロメートル飛翔し、太平洋上に着弾した。北朝鮮のミサイルが日本上空を通過したのは、5年ぶり7度目で、付近を飛行する民航機や航行する船舶に甚大な被害を及ぼしかねない暴挙だった。

北朝鮮が10月4日に発射した過去最長飛距離の中距離弾道ミサイル。危機は近くまで来ている(ZUMA Press/アフロ)

安保理機能せず、暴走する北朝鮮

 この事態に国連安全保障理事会は緊急会合を開いたが、拒否権を持つロシアと中国の反対で、北朝鮮に対する非難声明すら出すことはできなかった。中露が反対した理由は「ミサイル発射は、米国の北朝鮮に対する軍事行動の結果だ」という北朝鮮の主張そのままで、呼応するように、北朝鮮は「米国は朝鮮半島の情勢安定に重大な脅威を与えている」との談話を発表、その直後、日本海に向けて変則軌道を含む2発の弾道ミサイルを発射した。

 今回の中距離弾道ミサイルの発射について、飛翔した距離の長さから、北朝鮮から約3400キロメートル離れた米領グアムを射程に、攻撃能力を誇示し、米国をけん制する狙いがあると分析されている。もちろんその通りだが、火星12は今年1月にも発射され、最高高度は2000キロメートルに達し、800キロメートル飛翔し、日本海に着弾させている。ロフテッド軌道と呼ばれる発射技術で、高高度に打ち上げ、マッハ10を超す超高速で落下してくるため、現在のミサイル防衛で迎撃することは極めて難しく、日本にとっても大きな脅威であることは間違いない。

 国連安保理は機能せず、北朝鮮は暴走し続け、今年だけでミサイルの発射弾数は27発(10月10日現在)に達している。ロフテッド軌道だけでなく、変則軌道や連続発射、多弾頭化などミサイル技術が高度化する一方で、それらを迎撃するミサイル防衛の技術は追いついていない。しかも北朝鮮は、核兵器を小型化し、ミサイルの弾頭に確実に搭載可能とするため、近く7回目の核実験を強行するとみられている。

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