2024年4月26日(金)

21世紀の安全保障論

2022年10月11日

核攻撃は甘受できない

 核ミサイルという脅威に直面する日本は、まず米国と連携しながらミサイル防衛の迎撃能力を向上させ続けることが大事だ。しかし前述した通り、現状はミサイル技術の進展に迎撃能力は追いついておらず、それだけで国民を守り切ることはできない。だからこそ、絶対に核ミサイルを打たせない抑止力として機能するだけの攻撃力を保有する必要がある。

 政府はこれまで、敵基地攻撃は自衛の範囲で必ずしも違憲ではないとしながらも、専守防衛を理由に敵基地攻撃能力を保有してこなかった。だが固執してきた従来の専守防衛とは、相手の第一撃(先制攻撃)は甘受する、言い換えれば、国土や国民への被害が発生することを前提にした残酷な戦略でもある。核ミサイルという激烈な損害が生じる脅威が現実味を帯びる中で、被爆国の国民である私たちは、従来通りの専守防衛という受動的な戦略を受け入れることなどできない。

 ロシアによるウクライナ侵略で、多くのウクライナ市民が犠牲となっているように、力を信奉する権威主義かつ独裁国家が、身勝手な理由で国際秩序の変更を企てようとしている時だからこそ、今という時代に相応しい「専守防衛とは」を議論する必要がある。それは第一撃を甘受することなど到底できないという被爆国からのメッセージでもある。

 
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