2024年12月5日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月22日

 11月2日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)社説が、代替機の恒久配備なしに沖縄からF15戦闘機を退役させるとの米国の決定は、防衛力の低下になるとともに、中国などに間違ったシグナルを送ることになると批判している。

fKuroda / iStock / Getty Images Plus

 米国防省は、数十年にわたり沖縄に配備してきたF15戦闘機を退役させようとしている。

 このニュースがリークされた後、米空軍は「11月から2年かけて、嘉手納基地に前方展開している F15C/D 戦闘機の段階的な撤退を行う」と発表した。F15 C/D は導入から平均38年が経過し、維持管理に多額の費用がかかっている。 

 西太平洋第一列島線にある戦略上重要基地に恒久的に配備される戦闘機を用意しない儘、F15は撤退する見通しだ。空軍は「より新しく、高性能な航空機」を「一時的に」巡回配備する予定だという。同時に国防省は「長期的な解決法につき未だ決定を下していない」と述べている。

 この問題は、「後継機への投資削減」等により「不可避的に起きた結果」である。空軍は当初、F22を750機購入する計画だったが、ゲーツ(元国防長官)が187機で生産を中止させた。

 空軍は任務遂行に必要な数のF35を購入していない。米空軍は、「中国が台湾を攻撃する準備が整う可能性のある2027~30年という重要な時期」に、第5世代の戦闘機が「当初計画の45%以下」になる事態に直面する可能性もある。

 永続展開のメリットは、部隊が周辺状況を把握し、紛争発生時に即戦闘に従事できる態勢が整っていることだ。永続展開は、本気で秩序を守る米国の姿勢を敵側に納得させるという抑止力の面でも効果が高い。

 バイデン政権は、中国を「着実に迫って来る脅威」だと言い乍ら、空軍の強化に関心を示していない。共和党議員が11月 1 日に国防長官に送付した書簡で指摘したように、沖縄のF15退役は「間違ったシグナルを送る」。

 軍用機の購入を速め、太平洋地域に展開可能な長距離の火力等の装備を調達する役割は、米議会が果たさなければならない。F15 退役は、米軍事力低下を示す一つの兆候である。

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 10月27日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、嘉手納のF15退役が始まる、しかし後継機は当面巡回配備となる、巡回配備は中国に間違ったシグナルを送ることになるとして批判が出ていると報道した。その報道の翌日、米空軍は、報道を認め、F15退役は 11月から2年かけて行われる、当面F22が巡回配備される、永久配備の態様については未決定である旨発表した。その後、11月4~5日とアラスカからF22が夫々4機嘉手納に着いた。

 FTの報道以来、関係者から主として、①中国などへの間違ったシグナルになる、②今回の決定は十分な戦闘機を順次購入するという調達計画を怠った政策の失敗の結果であるとの批判が起きている。


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