2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月22日

 なお、嘉手納のF15は、1979年に配備され、当時は最新鋭の戦闘機だったが、今や老朽化し、電子能力などで中国の最新鋭機 J-16 等には適わないと言われる。嘉手納には48機が配備され、三沢と並んで在日米戦闘機約100機の半分を占める重要アセットとなってきた。F15の後継機として新たにF-15EXが開発されているが、配備までには未だ何年もかかるようだ。

台湾情勢にも影響

 この問題は、米国議会の関心も呼んでいる。11月1日、米議会共和党軍事関係重鎮のルビオ(上院議員)、ギャラガー(下院議員)、ハガティー(上院議員、元駐日大使)、マコール(下院議員)は国防長官に共同書簡を送付し、中国の脅威に対処すべき後継機の恒久配備なしのローテーション配備に懸念を覚える、これは中国だけでなく同盟国にも悪いシグナルを送る等と述べ、説明を求めた。

 現在の国際戦略環境に鑑みると、米軍機の巡回配備では、実力上も、メッセージ上も不十分な対応で、状況をより不安定化させるであろう。本件は日米の間でも議論されてきたことと思われるも、永久配備の決定がないままのF15の嘉手納退役が中国へ危険なシグナルを与えないように、また当該地域の米空軍力の低下につながらないように注意していくことが重要だ。

 特に台湾を巡る向こう数年状況は、極めて重大である。少なくともローテーション配備とその後の永久配備の間のギャップが生じないようにすることが重要であろう。同時に米空軍は戦闘機の購入をもっと円滑に行い、沖縄など米戦闘機の配備に支障が出ないように米国に意見していくことも重要であろう。今回、恒久配備の体制について国防省が未だ決定していないと述べていることが懸念を大きくしているように見える。

 11月1日、浜田靖一防衛相は米国から、①嘉手納のF15を今後2年かけて順次退役させ、今月上旬から暫定的にF22を派遣する、②「より高い能力を持つ恒久的な部隊に置き換えるという説明があった」と述べた。当面6カ月ごとのローテーション配備になるが、いずれ恒久部隊の体制になるとの見通しが打ち出されたことは、ひとつの安心材料である。今後とも日米間で緊密な協議を維持していくことが重要であろう。

   
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