あらたな大型支援も難問
一方、訪問を実現させたとしても、〝手土産〟をどうするか――という大きな問題が残る。
岸田政権はロシアのウクライナ侵略開始後、G7各国と歩調をあわせてロシアへの強い制裁、ウクライナへの積極支援に踏み切った。ロシア外交官8人の一挙追放、ヘルメット、防弾チョッキなど準軍事装備品の供与などで、こうした機会に、「遅い、少ない」などと揶揄される日本政府には似合わない健闘ぶりだった。
しかし夏以降、予算の問題などもあって〝息切れ〟し、このところ大規模なウクライナ支援は滞ったままだ。
現在、日本は、電力不足、厳しい寒さをしのぐための発電機、ソーラー・ランタンや防寒具などのほか、最近は、地雷除去のための金属探知機の供与を開始、市民生活に有用な機材、物資を供与している。しかし、3兆円を超える軍事支援を行っている米国、陸軍の主力戦車を供与する英国、装甲車を送るフランスなどほかのG7各国に比べると、地味な印象はぬぐえない。
G7以外でも韓国は、米国に対して砲弾10万発を供与する方針で、最終的にウクライナに提供されるとの見方もなされている。
ロシアの侵略から2カ月後の2022年4月、ウクライナ政府が作成した動画の中で、支援に感謝する国としてあげられたG7各国やスペインなど31カ国のなかに日本の名前がなかった。日本の抗議を受けてわが国を追加したあらたな動画が制作されたが、このことは、1991年の湾岸戦争の際の〝悪夢〟を思い起させるに十分だった。日本は当時、多国籍軍に多額の資金拠出を行ったにもかかわらず、クウェートが米紙に出した感謝広告では無視され、国民を失望させた。
日本の支援は重要な貢献ではあるが、目立たないのは残念というほかはない。
首相、短期間で困難な決断迫られる
広島G7サミットのウクライナ問題討議では、岸田氏を除く各国首脳が、オンラインで参加するゼレンスキー大統領と親しげあいさつを交わしたり、大統領との会談の様子について話題が及んだりすることがあろう。大統領との会談が実現しない場合、岸田首相はその輪に加わることができず、「蚊帳の外」に置かれてしまう。わが国の支援が派手さに欠けることに対しても各国から批判的な指摘がなされる可能性がある。
しかし各国並みの軍事的貢献はわが国には不可能だ。サミットまで、あまり時間がない。
短期間のうちに首相は、予算審議に縛られながら、ウクライナ訪問の時期を探り、法律や政府方針の枠内で可能な限り大規模、各国と比べて見劣りのいない支援をどうするかなど、困難な決断を迫られる。