2024年12月24日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月30日

ウクライナへの供与が決まったドイツ製戦車「レオパルト2」(DVIDS)

 1月7日付のワシントン・ポスト紙で、コンドリーザ・ライス元国務長官とロバート・ゲーツ元国防長官が、ウクライナ側に時間の猶予はない、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)諸国はウクライナに戦車などの武器を緊急に供与すべきだと主張している。

 プーチンは、ウクライナをロシアの統治下に置くことを決め込んでいる。彼は、ウクライナ国民の戦意を挫くことができ、米欧の団結とウクライナ支援はいずれ崩壊すると考えている。プーチンは辛抱強く自らの運命を達成しようとする。

 ウクライナは英雄的に反撃しているが、その経済は壊滅し、何百万の人々は逃避、インフラは破壊され、豊かな鉱物資源や産業力、農地の大半はロシアに支配されている。ウクライナは、今や西欧からの生命線に全面的に依存している。

 今交渉をすれば、ロシア軍は自分の都合の良い時に何時でも侵略を再開できるような強い立場を残したままに停戦になる可能性がある。これは受け入れられない。

 こうしたシナリオを回避する唯一の道は、米国と支援国が緊急に対ウクライナ軍事物資供与と軍事力支援を劇的に増大し、ロシアの再攻勢を阻止し、ウクライナが東部と南部でロシアを押し返すことが出来るようにすることしかない。

 米国などは、ウクライナが今必要とする追加的な軍備、特に装甲車両を供与すべきだ。1月5日の米国によるブラッドレー歩兵戦闘車供与の決定は遅きに失するが、評価できる。戦車については、ドイツなどが供与すべきだ。NATO諸国は、長距離ミサイル、先進ドローン、相当量の弾薬・砲弾、偵察監視能力などの物資を供与すべきだ。これらの能力は、ここ数週間に必要となる。

 われわれは、ロシアとの直接対決は回避するとのバイデン政権の決定には同意する。しかし、大胆になったプーチンは、そのような選択をわれわれに与えないかもしれない。ロシアとの直接対決を避けるためにも、ウクライナによる侵略者排除を支援すべきだ。これこそが歴史の教訓であり、遅すぎることにならないために緊急に行動せねばならない。

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 ライスとゲーツは、今最も重要なことはウクライナへの武器供与を緊急に行うことだと主張する。両者の意見は重要だ。その立場は、当面軍事的有利を確実にすることが最重要との考えに立っている。中途半端な停戦は「受け入れられない」旨の主張や、米国などNATOはウクライナが必要とする装甲車両、長距離ミサイルやドローン、偵察監視物資などを緊急に供与することが必要との主張は、理屈に合っている。

 両者は、米国のブラッドレー歩兵戦闘車供与決定について、それを評価するも、遅すぎたと批判する。さらに米露直接対決の回避を図るとのバイデン政権の立場に「同意する」と述べつつも、将来に火種を残すような解決では将来再び戦闘せねばならない、その場合米露直接対決回避の選択はなくなるかもしれないと示唆する。


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