2023年2月5日(日)

21世紀の安全保障論

2022年12月29日

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部谷直亮 (ひだに・なおあき)

慶應義塾大学SFC研究所上席所員

成蹊大学法学部政治学科卒業、拓殖大学大学院安全保障専攻修士課程(修了)、拓殖大学大学院安全保障専攻博士課程(単位取得退学)。財団法人世界政経調査会 国際情勢研究所研究員等を経て、一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構上席研究員、現職。

 ウクライナ軍によるモスクワ近くを含むロシア領奥地へのドローンによる戦略攻撃が12月初旬に相次いで成功している。10月にもこうした攻撃はあったが、今回は実際に被害が出ているという意味で画期的だ。

日本はウクライナ軍のドローン攻撃をしっかり戦訓として受け止めるべきだ(ロイター/アフロ)

 モスクワ近くにまでどうして攻撃が出来たのか? それはドローンの独特の軍事的特徴が影響しているからだ。こうした攻撃を『巡航ミサイルと同じ』とするような解釈もあるが、それは今次戦争を古い戦争としかみなしていないからだ。航空機を大砲の延長としか理解できず、あたら消耗させて米軍に惨敗した帝国海軍の航空屋のように。

 しかも今回の攻撃の深刻さは、ドローン防空が未だ前提ではない、20世紀の古い戦争を前提とする日本が同様の攻撃を受けた場合、首都圏の大規模停電を招きかねないという点だ。

ドローンがモスクワ近くを含む複数の空軍基地を複数打撃

 12月5、6日は、ロシア領に対する長距離ドローン攻撃が連打された。まず5日には、モスクワ南東185キロメートルとモスクワにほど近いリャザン州のディアギレボ空軍基地、同南東730キロメートルのサラトフ州のエンゲルス空軍基地の2カ所を自爆ドローンが襲った。

 それぞれ、戦略爆撃機部隊が駐屯しており、ウクライナへの巡航ミサイル攻撃を担ってきた部隊が展開していた。つまり報復だ。

 リャザンは戦略爆撃機の教育部隊と空中給油機部隊が展開している。加えて10月の成功しなかったドローン攻撃を受けて、より前線に近い空軍基地から後退してきたTu-22戦略爆撃機部隊も展開中だった。

 特にエンゲルス空軍基地は核戦力を担う戦略爆撃機部隊が存在する最も重要な戦略拠点だ。その2つの重要拠点が狙われ、爆発する様子が観測された。

 ロシア側はディアギレボ空軍基地では、自爆ドローンが突入した結果、燃料トラックが爆発し、3人が死亡、6人が負傷したと報じている。が、SNSには損傷したTu-22M3爆撃機の画像が流出し、被害がその程度ではなかったと思わせている。英国防省も原因は不明としながらも2機の損傷を発表した。

 またエンゲルス空軍基地では、開戦以来、ウクライナに巡航ミサイルを撃ち込んできたTu -95MS Bear-H 戦略爆撃機 2 機が損傷し、2 人が負傷したとロシア側が報じている。実際、衛星画像には破壊されたTu-95の機体が写っており報道は事実だろう。

 しかも攻撃は翌6日にも敢行され、クルスク州のカリノ空軍基地の燃料貯蔵庫が自爆ドローンの突入によって爆発炎上した。カリノ空軍基地もウクライナ攻撃に使用されている最新式のSu-30SM戦闘機の部隊が展開する重要な基地だ。

 同日にはウクライナ国境にほど近い、ブリャンスク地方のレスノエにある燃料貯蔵所も攻撃されたという情報もある。


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