2024年4月25日(木)

21世紀の安全保障論

2022年12月29日

ウクライナの戦訓を検証し、空地中間領域を制空ドローンで確保を

 ウクライナとロシア双方の戦術を演習場で再現し、また戦訓をウクライナから引き出し、たゆまず戦術と装備を改良していき、日本のインフラを防護することが求められている。その為には、自衛隊の現場に研究予算と権限を与え、諸制度を変えるべきだ。

 また具体的な調達面では、地上のレーダーサイトや在来機では捉えにくい低空域(高度1000メートル以下)の『空地中間領域(InDAG)』で活躍するドローンや巡航ミサイルに対する対策が必要だ。そのために早期警戒を担う滞空型ドローンの開発導入、ウクライナなどでも開発が進められている制空ドローンの試験調達やドローン先進国との共同開発を最優先とするべきだ。

 何故ならばドローン攻撃によるコスト負荷に対応するには、こちらもドローンで要撃するしかないからだ。いかにレーザーなどの一発当たりのコストが安価であろうとも、その本体は高額であり、全ての重要拠点に配備するのは不可能だ。

 対空ミサイルであれば、このコスト問題はさらに深刻だ。しかし制空ドローンであれば、低コストで機動して滞空する早期警戒ドローンが発見した、敵のドローンや巡航ミサイルを要撃可能だ。

 これは対戦車兵器があれば戦車が不要にならないのと同じだ。対空兵器があれば戦闘機が不要にならないのと同じでもある。日本ではドローンには対ドローン兵器〝だけ〟があれば対抗できるという誤解があるが、これは戦前に日本陸軍内で噴出した戦車不要論―対戦車兵器があれば戦車は不要―と同じ過誤だ。

 コスト優位性のあるゲームチェンジャーアセットは、同じゲームチェンジャーのアセットを中核として他の在来アセットと組み合わせて防ぐしかない。

 ロシアとウクライナのドローンがもたらす悲惨な戦禍は、私たち納税者にそれを訴えている。そうでなければ、ウクライナ国民の悲劇を数倍にした悲劇が日本を襲いかねない。すなわち安価なドローンがサイバー攻撃やゲリコマ攻撃と組み合わされて首都圏が麻痺し、大量の死者を出した挙句、東京湾に進駐した戦艦『ミズーリ』ならぬ空母『遼寧』の艦上で城下の盟を誓わされるような未来は回避すべきだ。

 
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 ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。
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