2024年12月12日(木)

WEDGE REPORT

2023年1月30日

 これら韓国軍のドローンは、韓国の対北朝鮮防衛構想「韓国型3軸体系」の重要な対抗手段とみなされている。韓国型3軸体系とは、北朝鮮のミサイル発射の兆候を探知して先制攻撃するキルチェーン、発射されたミサイルを迎撃する韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)、北朝鮮から攻撃された場合に指導部などに報復攻撃を行う大量反撃報復(KMPR)からなり、韓国軍のドローンは主にキルチェーンと大量反撃報復の手段として活用されると見られる。

 冒頭でも述べたどおり、北朝鮮によるドローン事件で刺激された韓国は、韓国軍のドローン開発と部隊育成のため、今後5年間で5600億ウォン(約591億円)を投入すると発表した。

ウクライナでは「市民型」ドローンも

 では、現在の実際の戦争で、ドローンはどのように使われているのだろうか。ロシア・ウクライナ戦争に、その様相を見ることができる。

 ロシア軍はイランから調達した、信仰告白者を意味する徘徊型ドローン「シャヘド136」で大きな戦果を挙げている。徘徊型ドローンとは、数時間にわたって目標地域上空を飛行し、戦車など高価値目標を発見するか、地上管制システムからの指令を受けて、目標に突入して自爆するタイプを指す。ゆえにシャヘド136は神風ドローンとも呼ばれている。

 一方のウクライナは、「デルタ」と呼ばれる戦場情報支援システムにドローンを組み込んでいる。ドローンの偵察結果と住民から提供された情報を前線指揮官がリアルタイムで把握し、状況判断できるコネクティッド戦争を指向しており、比較的小規模な作戦にも500機のドローンを投入できるという。また、トルコ製「バイラクタルTB2」や自国製「R-18」など攻撃型ドローンを巧みに操り、ロシア軍の侵攻を阻止していると伝えられている。

 そして、新たな潮流と言えるのが、ウクライナの市民による攻撃型ドローンの自作だ。手榴弾を搭載できるように3Dプリンターで改造した商用ドローンを、市民がスマートフォンで操縦し、ロシア兵を発見するや上空から手榴弾を投下する。実際に、自作ドローンでロシア兵を攻撃する模様がYouTubeに投稿されている。

 過去の戦争でレジスタンスといえば、小火器で武装した住民によるゲリラ攻撃や地下組織による情報活動が主だったが、ドローンの登場によって、こちらの様相も大きく変わったと言えるだろう。

 いかがだろうか。軍事におけるドローンの役割は、当初の偵察から各種爆撃、特殊作戦、レジスタンスまで広範囲にわたっており、ドローンの登場によって従来の作戦や戦術が大きく変化したと言える。そのような中で、朝鮮半島で加熱するドローン軍拡は、果たしてどこ向かうのだろうか。ウクライナでのドローン戦争が、近い将来、朝鮮半島で再現されないことを祈るばかりだ。

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