2024年4月25日(木)

WEDGE REPORT

2022年5月20日

 筆者は尹錫悦政権が発足する少し前、日本の政界やマスコミが韓国での保守政権誕生で日韓関係が好転すると期待していることについて、「尹錫悦政権の踏み絵に 佐渡金山から見る反日感情」で、尹錫悦氏であっても韓国の構造的な反日に抗することができず、むしろ同氏が未来志向の日韓関係を掲げたことがアキレス腱になりえると論じた。

(代表撮影/ロイター/アフロ)

 本稿では、韓国の構造的な反日もさることながら、北朝鮮という社会主義の独裁国家と接しているにも関わらず、韓国ではなぜ左翼が強い力を持っているのか? という観点から、尹錫悦政権が誕生しても変わらない韓国という国の本質と同政権の対日政策の見通しに迫っていきたい。

韓国人も知らない建国秘史

 1945年8月15日、大日本帝国が連合国に敗れたことによって朝鮮半島は解放され、米軍が占領した南側に大韓民国が、ソ連軍が占領した北側に朝鮮民主主義人民共和国が成立した、ということが多くの日本人にとっての歴史的事実だろう。だが、これは正確な歴史ではない。

 ほとんどの日本人が、いや韓国人であっても、よほど政治や歴史に興味がある層を除いては知らない歴史的事実がある。それは、解放後の朝鮮半島で初めて〝建国〟された国家は、「朝鮮人民共和国」という社会主義国家であるということだ。

 ここから終戦直前の1945年まで時計の針を戻してみたい。

 8月9日、日ソ中立条約を破ったソ連軍がソ満国境を越えて満州に侵攻したことを受けて、連合国との終戦交渉をソ連に期待していた日本政府は万事休すとなり、10日には条件付きながらもボツダム宣言受諾の意思を連合国に表明した。

 しかし、この意思は朝鮮半島の統治機関である朝鮮総督府(総督府)には知らされなかった。総督府がそれを知ったのは本国政府からの公式伝達ではなく、連合国への意志表明のために行われた短波放送であった。

 ポツダム宣言が示した日本の主権が及ぶ範囲は、本州と北海道、九州、四国に限られていたため、総督府は敗戦によって主権を失った朝鮮半島に暮らす70万人近い日本人の生命と財産の安全を守ることが急務となった。そこでの懸念は①目前まで迫ったソ連軍による京城(現在のソウル)侵攻とソ連軍による日本人への暴虐、②日本統治に甘んじてきた朝鮮人の暴徒化――の大きく2つであった。


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