5月10日、保守系の尹錫悦が韓国の新大統領に就任した。尹氏は4月にワシントン・ポスト紙のインタビューに応じ、ウクライナへの対応、クアッドへの参加意向、対中関係、日韓関係、対北関係など、外交政策の方針につき幅広く基本的な考え方を述べている(Interview with South Korea’s next president, Yoon Suk-yeol, April 14)。
このインタビューから、新大統領の基本的考えがよく分かる。尹錫悦は、文在寅政権の政策を修正、軸足を対米、対日、対西側寄りに置こうとしており、歓迎される。
尹氏は、対中関係については、政治と経済の間で共存できると述べる。しかし、記者から、「高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配置では中国から経済報復を受けたではないか」と詰められると、「対韓経済報復は中国の利益にもならない」と述べるが、具体策は明らかでない。
対中関係は、経済依存、北朝鮮との絡み、対米関係への含意などの関数であり、国内では革新勢力だけでなく企業等からの圧力も出るだろう。容易ではない。とはいえ、対米、対日、対西側に軸を移すとの尹氏の考えは明確である。所謂バランス外交論が修正されることになれば、韓国の外交はより安定したものになる。
日韓関係では、指導者のナラティブ(発言等)が先ず重要だ。尹錫悦は、「日韓関係を金大中・小渕恵三時代に戻し未来志向で進める。国内政治に使わない」と明言し、シャトル外交や両国民の往来を再活発化したいと述べている。他方、労働者や慰安婦問題については直接触れていない。しかし、今必要なのは指導者のナラティブである。
過去5年一番の問題だったのは、文在寅自身が選挙や演説等で反日レトリックを先導したことである。大法院長官を交代させ、労働者問題訴訟の処理を前進させた。また朴槿恵・安倍晋三政権の間でまとめた慰安婦合意を実質的に破棄、財団を強制解散した。
尹錫悦のインタビューでのナラティブは非常に強く、尹を失敗させてはならない。今後の行動を見る必要はあるものの、日本側からこのナラティブを壊さないように配慮していく必要があろう。