2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2022年3月15日

 韓国大統領選挙で保守派の尹錫悦(ユン・ソギョル)候補が勝利したことにより、5月10日から尹錫悦政権が出帆する。5年ぶりの保守政権誕生を日本の政界やメディアは好意的に受け止めており、尹錫悦氏が当選後の記者会見で日韓関係について、「過去より未来をどのようにするかが両国の利益だ」と述べたことから、同氏が日韓関係を大きく改善すると期待する論調が出てきている。

 だが、筆者は尹錫悦政権が必ずしも日韓関係を改善できるとは思っていない。同氏が韓国の民族的アイデンティティを重視する保守派に推されて当選したが故に、韓国の構造的ともいえる〝反日〟の世論に抗することは困難であると考える。むしろ、未来思考の日韓関係を掲げたことは、同氏のアキレス腱ともなりえるだろう。

日韓関係の改善を掲げる尹錫悦氏だが、実際の政権運営が注目される(新華社/アフロ)

 これが近々に顕在化するのが、いわゆる「徴用工」訴訟問題だ。現在、韓国司法は三菱重工業の特許権や商標権、日本製鐵が保有する合弁企業の株式を差し押さえており、これら資産を売却(現金化)して、徴用工への賠償金に当てる方針を示している。そして、今年2月に三菱重工による即時抗告が棄却されたため、同社の資産約5億ウォン(約4800万円)が近いうちに現金化されると見られている。

 尹錫悦氏は「徴用工」訴訟問題などの歴史問題と、韓国向け輸出管理強化など日韓間の課題を「包括的に解決する」と述べているのみで、日本企業資産の現金化にどのように対処するのかについては明確な方針を示していない。むしろ、韓国も日本などと同様に三権分立が確立されているため、同氏が大統領として介入すれば司法への不法介入と指弾され、新たな政争に発展する可能性が大きいことから、司法の決定を粛々と見守るのではないであろうか。

 佐渡金山をめぐる日韓の対立

 しかし、2023年に世界文化遺産への登録の是非が審議される「佐渡島(さど)の金山」問題は、執権2年目に入った尹錫悦政権を大きく揺さぶる可能性がある。


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