2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月8日

 韓国の大統領選挙がいよいよ3月9日に迫っている。与党の李在明候補にも野党尹錫悦候補にもまともな経済政策がないとの批判が韓国マスコミから出ている。2月15日付けの東亜日報社説は、与党李在明候補も野党尹錫悦候補も、①自営業者へのコロナ関係支援や特に李在明候補の場合はベーシック・インカム政策のための支払いなど、財源の検討をしないままのばら撒きの公約になっている、②成長のエンジンとなる公約が見えないと批判する。

 2月17日付け中央日報社説も、財源を考えることなくバラ色の未来だけを掲げるのは問題だと批判している。これらの批判は当たっている。韓国でもポピュリズムが進む中、公約は大きな政策というよりも細かな人気取りばら撒きの様相が強くなっている。

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 両者の公約を見てみると大略次の通り。

 李在明の公約には、
①大統領の任期を4年とし再任を認める
②全国民を対象とした年100万ウォン(約9万7000円)の基本所得(ベーシックインカム)を支給
③世界5位内の総合国力の達成
④米軍主導の韓米連合軍が持つ有事作戦統制権の韓国軍への移管の任期内での実施
などが含まれている。

 尹錫悦の公約には、
①宮廷式大統領府を解体、大統領執務室は任期開始前に政府ソウル庁舎に移転
②小商工人・自営業者を中心に正当で完全なコロナ損失補償
③大統領直属の新型コロナ緊急救助特別本部の設置
④規制革新で企業投資を活性化し労働改革を通じて合理的労使関係を確立
⑤企業の成長による「民間主導雇用創出」を図る
⑥住宅250万戸以上を供給
⑦女性家族部の廃止
などが含まれている。また21日には、「安全な原発技術を発展させ、韓国の中核エンジンにする」、文在寅政権が進めた脱原発政策を白紙化し「世界一の原発大国を目指す」考えを明らかにした。

 今回の大統領選挙は、文在寅政権のコロナ対策、経済政策、外交政策などにつき基本的問題が指摘されているにもかかわらず、大きな政策論争を欠き、スキャンダルなどネガティブ・キャンペーンの性格の強い低調、低級な選挙になった感が強い。選挙は、李在明対尹錫悦の一騎打ちの構図になっているが、不安定な接戦のまま終盤戦に入っている。

 2月19日の発表のギャラップ調査(15~17日)によると、尹錫悦41%(前週より4ポイント上昇)、李在明34%(前週より2ポイント下落)、中道野党「国民の党」候補の安哲秀11%、革新系野党「正義党」候補の沈相奵4%となった。政党支持率は野党「国民の力」が39%、与党「共に民主党」が35%となった。


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