2024年11月22日(金)

ベテラン経済記者の眼

2013年6月30日

「黒田緩和はやはり少々乱暴すぎた」

 ひるがえって日本銀行の黒田東彦総裁。4月4日に劇的な「量的・質的緩和」を決めて以来、株価は上昇し、円相場は下落し、金利もいったんは低下したが、その後長期金利が上昇するなどの荒っぽい動きになっている。4月の「黒田緩和」以降の市場の動きについて6月28日の日本経済新聞は「株価が急騰すると投資マネーが国債から株に移るとの思惑が浮上し、長期金利は急反転して一時、1%の大台をつけた」と解説したが、これはプロの市場関係者の見方と一致する。この結果、一時、金融機関が外国債券を買う意欲などもみせていたが、再び日本国債による運用に戻ってきた、とも日経は指摘した。

 筆者の取材した日銀関係者からは「黒田緩和はやはり少々乱暴すぎた。最初はよかったが、途中から市場に乱暴さを見抜かれた」との声が上がる。思い切ってやりすぎた結果、市場の混乱を招いたという見方だ。目下、長期金利の急激な変動をどう抑制してゆくのかが黒田総裁の課題になっているが、黒田氏は「戦力の逐次投入はしない」と記者会見などで語っている。対処療法的なやり方はとらず、しばらく様子を見るという姿勢だ。そうなると市場は黒田総裁の次の手を読みにかかる。ここで市場とどう効果的に対話するのかが黒田総裁に問われることになる。

 参院選が7月4日に公示され、選挙戦に入る。日銀はさすがに7月の選挙期間中は静かにしておいて、政権の先行きが見える選挙後から秋頃の時期を見据えて政策を練ることになるだろう。聡明な黒田総裁ならいずれ何らか新たな政策を編み出してくるという期待もあるが、市場との対話は世界のどの中央銀行でも難しい。日銀の動きを取材する経済ジャーナリストもマーケットの動きをにらみながらアタマをひねる暑い夏になりそうだ。


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