ウクライナのザゴロドニュク元国防相が3月2日付の英フィナンシャルタイムズに、「和平協議を始めるようにとのキーウへの圧力はロシアの酷い意図を読み間違っている。プーチンの戦争マシーンが全力を出している限り、ウクライナが戦闘をやめることは自殺的である」との論説を書いている。主要点は、次の通り。
ウクライナ政府も国民も、プーチンとの和平協議には懐疑的である。われわれは、われわれが戦わないならばロシアは侵略を続けると理解しているから、そう決意しているのである。今日、ロシアの侵攻はそれが止められたところでのみ止まる。そうしなければ、ロシアの侵攻はもっと多くの虐殺と破壊を生み出す。
ゼレンスキー大統領は数カ月前に和平プランを提案した。それは2月23日に141カ国の多数が賛成した国連決議の要石になった。ロシアは和平プランを全く提案していない。ロシア軍がわれわれの家から立ち去る用意があるとの兆しはただの一つもない。逆にロシアはウクライナ国家自体への憎しみを大声で示し、長期戦争のための計画を立てている。ロシアの軍事工場は3シフトで稼働し、軍は引き続き兵を動員している。
われわれが戦闘をやめれば戦争を止められると考えることは、一種の自殺になるだろう。
全ての実りある交渉にとり、重要な要素は潜在的な合意のゾーンである。双方に受け入れ可能な条件の組み合わせである。プーチンがウクライナの存在を消す目標を追求し、われわれが自分の土地を解放しようとするときに、何がそのようなゾーンでありうるか。
譲歩の提案は平和をもたらさず、ウクライナの領土の占領を正当化し、住民を終わりのない苦難にさらすことになろう。占領地では広範な虐殺が際限なく起こっている。
ロシアの侵攻はウクライナだけではなく、民主主義共同体全体への脅威でもある。
問題を今封じ込めないと、代償はもっと高いものになるだろう。西側諸国は今ロシアの凍結資産を3000億ドル以上持っている。ロシアの侵略が不当で不法であると考えられている今、プーチンに速やかに支払いをさせる事は意味があるかもしれない。
ウクライナに話し合いを始めるように圧力を加えることは、抵抗以外に代替策がない現状を無視することである。侵略の犠牲者が武器をおいた紛争で、犠牲者に受け入れられる和平ができたためしはない。だからわれわれは全ての困難にかかわらずわれわれの自由のために戦うことを選択したのである。
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このザゴロドニュクの論説は、ウクライナ戦争が不当で不法なロシアによる侵略戦争であるという根本を指摘したうえで、それを終わらせるためにはロシアが敵対行為をやめればいいのであって、侵略の犠牲者が戦うことをやめることを求めることは間違いであると論じている。これは極めて真っ当な論である。
ウクライナがロシアの不当で不法な戦争に抵抗するのは自衛のためである。ウクライナがそう決意している以上、それを支援するのは国際的な正義のためにも適切なことである。