2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年3月13日

 戦争が生み出す死傷者や被害を懸念し、反戦や平和を主張してデモを行っている人はこのウクライナ戦争がどうして起こっているのかということをよく考えてみるべきであろう。プーチンがウクライナ国家の存立を否定し、それをロシアに併呑するためにウクライナを侵略しているのがこの戦争の原因である。

 戦争をやめろとロシア側に言うべきであって、戦争の長期化になるから西側はウクライナ支援を控えよ、ウクライナは停戦協議に応じるべきである、という言説は、加害者と被害者を取り違えている間違った言説である。

お互いが制限下に置かれた戦争

 このウクライナ戦争は停戦協定で終わるだろうと考えられる。ロシア本土は攻撃対象にしないとの制約付きでウクライナへの米国の武器支援は行われており、ウクライナに侵攻したロシア軍は攻撃対象になっているが、ロシア本土は攻撃されていない。そのような制限戦争が、ロシアが降伏文書に署名して終わることを強いるとは考えられない。

 また、ロシアが武器支援の中継点であるポーランドを攻撃することは、北大西洋条約機構(NATO)とロシアの直接対決になるので、ロシアにはそれはできない。ここにも制限がある。他方、西側からの武器支援は続くことになるので、ウクライナがロシアに降伏する事態も考え難い。

 そうなると停戦以外にないが、その停戦ラインがどうなるかという問題になる。ウクライナ側は戦争初期には、ロシア軍が戦争開始前の昨年2月24日の線まで撤退することを求めていたが、今はウクライナ領全てからの撤退を求めている。

 一方、ロシアは併合したウクライナの4州(ドネツク州、ルハンシク州、ザポリージャ州、ヘルソン州)のロシアへの統合をウクライナが認めることを要求している。双方の要求が今後の戦況の中でどのように変わっていくかが注目点である。

   
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