2024年12月4日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年3月13日

 景気の先行きを示す購買担当者指数(PMI)だが、昨年は6月と7月だけが好景気(50以上)で、残る10カ月はすべて悲観的だった。特に上海ロックダウンが起きた4月、全国的に感染が拡大した12月はきわめて深刻な状況にあったことがわかる。

国家統計局資料をもとに筆者作成 写真を拡大

 それが今年に入って一転した。1月、2月ともに50を大きく超えて上昇している。世界経済の不振と米中対立の影響から今後の輸出低迷が不安視されているものの、昨年最大の課題とされていた不動産問題はデベロッパーへの資金供給に目途が立ち、また住宅ローン条件の緩和などの販売促進策が打ち出されたこともあって、悲観論は和らぎつつある。

 23年の経済成長率目標は「5%前後」と従来よりも低く設定されたものの、経済の先行きを悲観したというよりも、バブルを避けるためにあえて慎重な数字を設定したと見るべきだろう。地方政府はより野心的な目標を掲げていることもあり、目標を大きく上回ることは間違いないと見られる。

政府活動報告で語られなかった〝危機〟

 政府活動報告ではうまくいった話が中心だが、一応、問題点とリスクもあげられている。やや長いが、該当部分を引用しよう。面倒な人は読み飛ばしていただいてかまわない。

われわれは発展の成果を認めると同時に、次のように冷静に見て取らなければならない。わが国は発展途上大国として、今なお社会主義の初級段階にあり、発展の不均衡・不十分という問題が依然として際立っている。足下の発展はさまざまな困難と試練に直面している。外部環境が不確実性を増し、世界的にインフレ率が高止まりし、世界経済・貿易成長の原動力が弱まり、外部からの抑圧・阻害がエスカレートしている。国内経済の安定成長の基盤はいっそう強化される必要があり、需要不足が依然として際立ち、民間投資と民間企業の先行きが不透明で、多くの中小・零細企業や自営業者が多くの困難を抱え、雇用対策は非常に困難であり、一部の地方政府の財政難がさらに深刻になっている。不動産市場が数多くのリスクを抱え、一部の中小金融機関のリスクが顕在化している。発展において体制・仕組み上の障壁が依然として多くみられる。科学技術イノベーション能力が伸び悩んでいる。生態環境保護は前途多難である。防災・減災面などで都市・農村部のインフラに明らかな脆弱性がみられる。民生分野に問題点が多々ある。形式主義・官僚主義が依然として目立ち、一部の地方政府に政策実施の硬直化、ノルマの上乗せがみられ、一部の幹部は職務を怠り、職権を濫用し、蛸壺化が進み、現実を見ず、大衆の意思を無視し、大衆の合法的な権利・利益を軽んじるなどの問題がある。一部の分野、業種、地方で腐敗問題が時折起きている。政府活動に対する人民大衆の意見や提案を重視する必要がある。問題と課題に立ち向かい、全身全霊を傾けて政府活動の改善に取り組み、人民の切なる負託に応えなければならない。
(日本語訳は中央党史和文献研究院)

 あれもこれもと、問題点が書き連ねられているが、ほとんどは前年の政府活動報告と同内容である。新たに盛り込まれたのは「不動産市場のリスク」と「防災インフラの脆弱性」ぐらいだろうか。毎年毎年、困ったものだと言い続けているものであるがゆえに、あまり切迫した課題とはとらえがたい。

 むしろ本当の「危機」は書かれていないところに存在する。

 筆者は、今年の政府活動報告でもっとも注目すべき点は「都市部新規雇用目標1200万人前後」だと見ている。昨年の「1100万人以上」からざっと100万人の増加だ。経済成長目標は低く抑えたが、雇用の目標はかなり野心的である。

 それはなぜか?


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