2024年12月8日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年3月13日

 2023年の全国人民代表大会(全人代)が3月13日に閉幕した。第3期習近平体制は混乱なく順調な滑り出しを切ったかに見える。中国共産党は安定を誇示するが、その背後には隠れた危機が忍び寄っている。

(AP/アフロ)

「コロナ後」の景気は順調

 昨秋の中国共産党第二十回全国代表大会(二十大)で、習近平総書記の第3期政権が確定した。このタイミングで党幹部の新人事が行われたが、首相や閣僚など国家機関の人事は全人代で決定される。すなわち、二十大から全人代までの約半年間は、突発的なアクシデントに対応しづらい権力移行期である。

 間の悪いことに、中国では新型コロナウイルスの封じ込めが継続できなくなり、ゼロコロナ対策を転換するという大事件が起きている。誰もが不安を抱く状況だが、中国はこの苦境をどうにか乗りきったと評価していいだろう。

 全人代初日となる3月5日、2022年を振り返る政府活動報告が発表された。最後の晴れ舞台となった李克強首相(当時)はゼロコロナ転換とそれに伴う混乱を乗り切ったと胸を張っている。

 「昨年、わが国の経済発展は感染拡大など国内外の度重なる予期せぬ事態に見舞われた。党中央の力強い指導の下、われわれは感染症対策と経済・社会の発展を効率的に両立させ、ウイルスの変異と防疫状況に応じて感染症対策を適時に調整した(中略)困難に立ち向かう中で経済を安定させ、複雑で変化の多い環境において発展の年間主要目標・任務を基本的に達成し、わが国の経済は高い強靭性を見せた」

 経済成長率こそ前年比3%増と目標(5.5%前後)には届かなかったものの、それ以外の統計は前年の政府活動報告で発表した目標を上回った。都市部新規就業者数1206万人(目標1100万人)、失業率5.5%(目標5.5%以内)と雇用関係はもちろん、輸出と食料生産は絶好調、物価は安定、財政赤字も予定通りといった具合だ。

 23年の経済運営にも自信が感じられる。ゼロコロナ転換後に中国国民の大半が一気にコロナに罹患するという、驚くべき事態が起きた。その影響から昨年12月の経済は大打撃を受けたが、今年に入り景気は力強い回復を示している。


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