ジブチを邦人退避の拠点とするならば……
政府は昨年12月に改訂した国家安全保障戦略で、政情不安な国が多いアフリカや中東情勢を踏まえ、「ジブチを邦人保護の活動拠点として活用していく」と明記している。そのためには、特殊作戦を担える陸自隊員を増員し、滑走路が使えない状況下でも緊急展開するために、防弾板などを施したCH47輸送ヘリ(チヌーク)の配備などが必要だろう。実際、今回のスーダンで米英軍は、滑走路が使えないため、特殊作戦用の大型輸送ヘリMH47(同)を3機投入し、自国民の救出作戦を敢行している。
今回の退避作戦終了後、防衛省幹部は記者団に対し「邦人らの安全を確保できる退避ルートの設定や関係国との調整など難しいミッションだった」と述べ、前述したように吉田統幕長も「陸上輸送も検討の幅に入れている」と話していた。ジブチを邦人保護の活動拠点とするのであれば、自らの退避作戦に加え、米英軍のオペレーションも検証し、自衛隊が陸上輸送を行う場合の実施要件や自衛隊の権限などを含め、現行法の見直しと正面から向き合わなければならない。
オスプレイの戦力化を急げ
今回の退避作戦の副産物は、オスプレイがいまだ教育訓練の途上にあるということがわかったことだ。沖縄・尖閣諸島など島嶼防衛を目的に配備が始まり、17機体制で離島防衛の要となる水陸機動団などを緊急展開させるのが主任務だ。チヌークに比べ最高速度は2倍の時速600キロメートルを超え、航続距離と飛行高度は3倍に達するという。
部隊による教育訓練は、すでに2年が経過しており、尖閣諸島をめぐって中国の軍事的圧力が強化されている情勢を踏まえれば、オスプレイの戦力化は急務だ。そして、それは同時に、邦人保護のオペレーションの幅が広がることにつながると確信する。
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安全保障といえば、真っ先に「軍事」を思い浮かべる人が多いであろう。だが本来は「国を守る」という考え方で、想定し得るさまざまな脅威にいかに対峙するかを指す。日本人の歪んだ「安全保障観」を、今、見つめ直すべきだ。
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