認可法人「外国人技能実習機構」によれば、21年度に実習認定を受けた17万1387件のうち、業種別で最も多いのが「建設」の3万5606件(全体の20・8%)で、「食品製造」の3万3346件(19・5%)が続く。「機械」や「繊維」などを含めると、製造業で働くことになる実習生は全体の4割以上に上る。一方、実習生頼みのイメージが強い「農業」は10%未満、「介護」は5%以下に過ぎない。
実習生を最も欲する
現場から見える〝本質〟
「食品製造」の実習生を職種別に見ると、「そう菜製造」が半数以上を占め、その他の業種を含めて最も多い。「そう菜製造」とは、コンビニやスーパーで売られる弁当などの製造現場での仕事である。つまり、実習生を最も欲するのは、「弁当工場」のような現場なのだ。私たちに格安の弁当を届けるため、数多くの実習生が受け入れられている。ここに実習生受け入れの〝本質〟がある。しかし、その是非、また受け入れに伴う負の側面は何ら検証されていない。
実習制度〝廃止〟の陰では、もう一つ大きな動きがある。外国人労働者受け入れのため、政府が19年に創設した在留資格「特定技能」が拡大される見込みなのだ。
特定技能の資格取得には、日本語能力に加え、業種ごとに課される技能試験に合格する必要がある。ただし、実習生として2年10カ月以上働いた外国人に限っては、試験免除で資格が移行できる。特定技能の資格で働く外国人は昨年末時点で13万人を超えているが、うち74%は実習生からの移行組だ。
実習制度には、母国で就いていた仕事を日本で〝実習〟し、帰国後は復職するという規定がある。全く形骸化したルールではあるが、実習生の就労を最長5年に限定する根拠となっていた。しかし、特定技能の創設によって、実習生が日本へ残って働き続けられるようになった。「74%」という数字が証明するように、政府は実習生を日本に留め置くため新資格までつくった。結果、〝廃止〟を待つまでもなく、実習制度の論理は完全に破綻していたのだ。
特定技能には「1号」と「2号」があり、1号では5年。続けて2号に移行すれば無期限に働け、母国からの家族の呼び寄せもできる。転籍も認められるとあって、〝人権派〟からの評価も高い。現在「2号」が適用されるのは「建設」「造船」の2分野だけだが、政府は実習制度に代わる新制度創設に合わせ、他分野でも認めていくのだという。
特定技能でも最多の外国人が働く分野は「飲食料品製造」で、全体の32%に上る。その他の製造業を合わせれば、特定技能全体の50%以上だ。政府としては、「弁当工場」に象徴される仕事に外国人労働者を送り込み、できるだけ長期にわたって働かせたいようだ。
そんな本音を隠し、中間報告には次のような言葉が並んでいる。
〈外国人との共生社会の実現が社会のあるべき姿〉〈日本で働く外国人が能力を最大限に発揮できる多様性に富んだ活力ある社会を実現〉〈外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築〉……。
いったい政府は、外国人にいかなる〈能力〉を発揮して、どんな〈活躍〉をしてもらいたいのか。新制度のもと3年、特定技能「1号」で5年、さらに「2号」に移行して働いたところで、日本人のように自由に仕事を選べるわけではない。試験を受け直せば別業種への転職も可能とはいえ、特定技能が認める業種に限られる。再受験の面倒を避け、弁当工場で働くため来日した外国人の多くは、何年経っても弁当をつくり続けてくれるだろう。そうやって人手を求める企業のため、低価格の商品を欲する消費者のために外国人労働者を受け入れ、日本人の嫌がる仕事に固定してしまうことが、本当に〈外国人との共生の実現〉といえるのか。
政府には、日本が外国人労働者から「選ばれない国」になってしまう危機感があるらしい。事実、昨今の円安もあって賃金格差は縮小し、出稼ぎ先としての日本の魅力は低下が著しい。海外から人材を呼び込みたいなら、まずは日本人の賃金を上げることだ。外国人労働者の〝数〟確保ばかりに走れば、逆に外国人に見放される結果となりかねない。