2024年5月9日(木)

有機農家対談 「ぼくたちの農業」

2013年8月5日

 たとえば秋冬キャベツの追肥(ついひ)も適切な回数で行うのがいいんですけど、無農薬だと防虫ネットをかけるから、一回くらいしか追肥できない。そんなふうに栽培技術を勉強すればするほど有機の限界は見えてしまう。

 技術者と深いレベルで話していると「そんなに勉強しているなら、なんで無農薬でやっているの?」と言われます。いや、おっしゃるとおりなんですよ。部分的に変える用意はあるんですけどね。そもそも自分でも疑問に感じている時点で、「無農薬」であることに価値を感じているお客さんは、だいぶ離れてしまっているんですよね。とっくに見抜いて離れている(笑)。変えちゃってもいいのかもしれない。

「産地ブランド」から「個人ブランド」へ

小川:親父の代ではいろいろなスーパーに出荷していたんですけど、いまはスーパーが一社、百貨店も一社、あとは農家が共同経営している直売所に出荷しています。それぞれ一社だけにしているのは、どこでも手に入るようになるとダメだし、販売してくれる側から見ても面白みがないですよね。

 それでも販売先の幅は広くしているのは、スーパー、百貨店、直売所、売れるモノが全部違うんですよ。だからいろいろな販売チャネルは、いろいろなモノをつくる限りは持ちたいですよね。ただ、それぞれ一つに絞らないと、自分としてはキリがない。

 レストランについては絞り込んでいないですけど、現実を無視した安さを求めてくるお店や、「地元だから」というだけのお店は、やんわりとお断りしています。「この時期にこれを作るのは大変なんですよ」と言って理解してくれるところには一生懸命作って、値段もできるかぎりの努力をします。でも「安ければいい」「欠品があったら困るからとにかく持って来い」というところには、一生懸命にはなれないんですよ。相手にも伝わっちゃうんですよね。

久松:いまは地元のレストランだけ?

小川:いまは100%地元です。

久松:すごいな、それができるのがやっぱり柏の商圏の大きさなんですよね。

小川:でもレストランにとって虫の話はどうでもよくて……そもそもレストランはお客さんに虫の話はできない(笑)。

久松:どう考えてもNGワードですよ(笑)。


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