2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月7日

 第3は、米特殊作戦司令部の下に置くことである。サイバーは特殊で、特別の訓練や、技術を要するからであると言う。しかしサイバースペースで起こる多くの任務は単純で辛い仕事で、特別の訓練を必要としない。この選択肢の可能性は低い。

 第4は、新しいサイバースペース局の設置である。もしサイバーが新しい戦闘の領域であるなら、全く新しい機構をつくるべきであるとするものである。しかし、これは大胆に過ぎ、現状では必要とは考えられない。宇宙司令部の前例もあり、この選択肢が最も可能性に乏しい。

 最後は、現状維持である。米軍指導部が現状を維持しようと決めれば、それは全く合理的である。しかし現在NSAが大きな困難に直面しているので、この可能性は次第になくなりつつある。

 最終的決定は、司令官候補の将軍の人格、Alexander 将軍の経験、そしてなによりもコストによるだろう。

 長期的にどの選択肢がより賢明であるかにかかわらず、強制支出削減の状況の下では、一番安上がりな選択肢、すなわち現状維持かNSAとサイバー司令部の分離が最も可能性がある。サイバー司令部に関する最終決定がどのようなものであろうとも、それはサイバースペースにおける競争について行こうとする米軍部の更なる一歩に過ぎない、と述べています。

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 論説は、米サイバー司令部の将来に関して、最も安上がりな、現状維持かNSAとサイバー司令部の分離が最も可能性があると言っていますが、これは当面そうであるというだけの話で、サイバー司令部のあるべき姿については今後とも試行錯誤が続けられるでしょう。

 米国は、サイバー司令部の扱いを含め、サイバーセキュリティについて、徹底的に試行錯誤を繰り返してきました。これは、サイバーセキュリティが本質的に試行錯誤を必要とするものであり、また、サイバーが軍事手段として比較的新しい上に、その重要性が日増しに高まっていることによります。

 気になるのは、日本では、無謬性を強く求め試行錯誤にあまり寛容ではないように思われる点です。それは、サイバーセキュリティへの取り組みに足枷となりかねず、意識を改める必要があります。当局も、サイバーセキュリティには試行錯誤が付きものであることを周知する必要があるでしょう。本論説の意義は、そうした点で、教訓を与えてくれることにあると言えるかもしれません。

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