2024年6月18日(火)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年6月19日

サバが獲れない誤った理由を科学的に検証してみた

 「深く潜っているからサバが獲れない」が理由にならないことを、データで検証します。下の表は北部太平洋における日本とロシアのサバの漁獲量を比較したものです。

日本とロシアのサバ漁獲量実績と減少率(出所)NPFCデータを編集 写真を拡大

 日本が主体としている巻き網は150メートル前後までの水深で漁獲します。200~300メートルの深さでは網が届きません。しかしながら、カレイやタラ類のような底魚ではなく、常に底にへばりついている魚ではありません。浮き魚ですので、サバさえいれば獲る機会は出て来ます。

 日本の漁船だけでなく、日本の排他的経済水域(EEZ)内も含むロシア漁船の漁獲量は、22年は前年(21年)比で偶然にも共に57%の不漁となっています。サバを漁獲しているロシア漁船は、巻き網主体の日本漁船と異なり98%が中層引きのトロール漁船です。トロール漁船は巻き網漁船と異なり、数100メートルもの深さでも漁獲可能です。

 つまり、科学的にみて「マイワシに追いやられてサバが深いところに居るため、漁獲量が減った」という理由は誤りなのです。

 マイワシの資源が多くてマサバが来遊しないという説があるようです。ところが、下のマサバとマイワシ(共に太平洋系)の漁獲量推移を示したグラフをご覧下さい。マイワシの漁獲量が、現在よりもはるかに多かった1980年代の中ごろは、マサバの漁獲量は現在よりもはるかに多かったことがわかります。

マサバ・マイワシ太平洋系群の漁獲量推移(出所)農水省データを編集 写真を拡大

 もし、マイワシが原因であれば1980年代の中ごろのマサバ漁は、現在よりもかなり少なかったはずですが、そうなっていません。筆者が北欧の漁業関係者と話した際には「マイワシはマサバのエサだよね」と言われました。しかもデータでは成長が遅いとは言っても、4歳以上の大きなサバがいることになっており、かつマイワシはデータ上2歳以下の小型が大半。「何でエサからマサバが逃げるの?」とますますマイワシのせいにはできなくなってしまいます。

それでもサバはいるのか?

 日本とロシアの両国は、日本のEEZを含む漁場でサバを漁獲しています。それでもサバはいると主張されているのは、中国漁船の漁獲量が約11万トン(2022年・データNPFC)と前年比2%増とほとんど変わらないからかも知れません。

 しかしながら、中国漁船は同じNPFC海域でも、日本のEEZ内では漁獲できないので、かなり東の公海上となります。もし、日本のEEZ近辺にサバが近付かなかったことが不漁の原因だとしたら、公海操業の中国漁船の漁獲量は前年並みではなく、大幅増であったはずです。

NPFCが管理する海域  写真を拡大

 サバに限らず、サンマ、サケ、スルメイカなどの漁獲量が減った原因は、海水温上昇や外国漁船が悪いのだとマスコミを通じて報道されています。このため国民の多くが「獲りすぎて魚が減っている」という本当の理由を理解していないため、獲りすぎが止まらず、さらに不漁となり、価値が低い小さな魚でも高騰し、最後はほとんど獲れなくなってしまうという悪循環が続いています。まだ有効な手段は取られていません。

 広く国民が科学的根拠に基づいた厳しい現実に気付くことが不可欠と筆者は考えています。

連載「日本の漁業 こうすれば復活できる」では、日本漁業にまつわるさまざまな課題や解決策を提示しております。他の記事はこちら
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 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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