シェールガス革命の恩恵はあったが……
オバマ大統領はシェールガス革命により価格が下落した天然ガスを石炭に代え利用すれば、二酸化炭素は減り、電気料金も上がらないと考えているようだが、これは大きな間違いだ。確かに米国内の天然ガス価格はシェールガスの本格採掘開始以降下落している。発電所向けの天然ガスと石炭の発電所着価格の推移を比較したのが図‐1だ。同じ発熱量では依然石炭のほうが安い。しかし、石炭は使用に際し手間がかかる。燃焼した後も灰処理がある。その点を考えると、石炭の価格は天然ガスの3分の2程度以下でなければ競争力がないだろう。
本格生産開始以来天然ガス価格は急速に下落し、石炭に対して競争力を持つようになった。この安い天然ガスにより、かつて全米の電力の50%を供給していた石炭火力はシェアを奪われ昨年40%を切るまでに低下した。シェールガス革命により二酸化炭素は減り、先進国で最も競争力のある米国の電気料金も維持されている。さらにシェールガスを利用すれば石炭比率を下げることが可能とオバマ大統領は考えているようだ。しかし、そうではない。これまでと事情は異なり、今後米国の電気料金は大きく上昇する。
政策の実行は米国の電気料金の上昇を招く
天然ガスはパイプラインで輸送されるので全米どこの地点でもあまり価格は変わらない。一方、石炭は個体だ。鉄道、トラック、艀で輸送される。距離が遠くなれば、その価格は急速に上昇する。米国の幾つかの州の発電所向け天然ガス価格、石炭価格、電気料金を表‐1に示した。産炭地から離れる州ほど石炭価格は上昇している。米国の産炭地は東部ウエストバージニア州、中西部インディアナ、西部ワイオミング州、ユタ州などだ。
天然ガスへの切り替えが起こったのは、産炭地から離れ石炭価格が高い州でのことだった。図‐2が示すように、産炭地に近い州では依然石炭が圧倒的に価格競争力を持ち天然ガスへの切り替えは起こっていない。もし、今後石炭火力の削減を図るとなると、これからは産炭地近くの石炭火力を減少させる必要がある。その結果は電気料金の上昇だ。表-1の通り、米国内の電気料金は、化石燃料以外の電源が何かにもよるが、産炭地が安い。