6月下旬からフランスの商店は一斉にバーゲン時期になる。この時期に多くのブランドもののお店では行列ができるが、いまその行列を作っているのは殆ど全員が中国人だ。パリで開催された欧州‐アジアのエネルギー政策に関するシンポジウムでの発表のために現地にいるが、街中で出会う東洋人に日本人は殆どいない。シンポジウムの主催者の1人であるシンガポール国立大学の先生に言わせれば「中国人は集団で行動するから直ぐに分かる。昔は目立つのは日本人だったけど、今は中国人だ。時代は変わった」と言うことだ。
中国人のブランド品の購買意欲には驚くばかりだ。「買う」方での買占め行為は一部の人から嫌な目で見られるくらいで済むが、「売る」方にあまりに熱心に行動すると拙いことになる。中国製太陽光パネルなどの欧州向け輸出に関し、不当廉売との仮決定が欧州委員会(EC)から出されたが、中国と欧州、特にドイツ、フランス、英国との関係が注目される。不当廉売を引き起こしたのは中国の誤った産業政策だが、そのツケは結局、欧州諸国が払わされることになりそうだ。
米国とも欧州とも摩擦を引き起こす
中国製太陽電池とパネル
米国商務省は、昨年5月に中国製太陽電池を不当廉売と認定し仮の税率を決定した。11月には決定は正式となり、税率も最終の数字に修正された。しかし、したたかな中国企業は課税対象が中国製「太陽電池」であることに注目し、太陽電池を台湾企業に委託製造し、パネルを中国で組み立て米国向け輸出を続けている。
欧州でも昨年7月にドイツのソーラーワールド社など太陽光発電設備製造業者が、中国製太陽電池、パネル、ウエファーを対象とした不当廉売の訴えを欧州委員会(EC)に行った。中国製太陽光発電設備の欧州向け輸出額は210億ユーロ(約2兆8000億円)であり、今までで最大額の訴えだ。訴えを受け、ECは昨年9月から不当廉売に関する調査を開始した。
パネル据え付けに係る業界などの1024社からは、中国製パネルの輸入減少は雇用の削減につながるとして認定に反対する訴えがECに対してなされた。正に、欧州での中国製パネルがいかに競争力を持っているのかの証拠だが、実際に事業用の中国製太陽光パネルの価格は欧州製の約半分と言われている。また、反対派が根拠としてあげたレポートによると、課税率60%で3年以内に欧州で太陽光パネル設置などに係る24万人の雇用と270億ユーロの市場が失われるとされる。価格競争力のある中国製パネルが市場を作りだしているということだ。再生可能エネルギーは、設備を売る方あるいは電気を買う方、どちらかか、あるいは、両方で補助金がなければ成り立たないのだろう。
5月に不当廉売としてECが課税を決定したとの報道があり、次の税率が適用されると報道された。