2023年12月4日(月)

World Energy Watch

2013年7月3日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 中国経済はかなり減速している。中国政府の発表はあてにならず、実際には成長率は年率4から5%になってきている。この経済成長が低下しているなかで、中央政府と地方政府が目を付けたのが太陽光パネル製造事業だ。地方政府が補助金と低利融資で育てようと力を入れ、保定市、新余市など5都市が5ソーラー市と呼ばれるようになり、40万人の雇用を創り出した。しかし、問題は地方が勝手に投資を行い中央がなにもコントロールしてないことだ。その結果が、この貿易摩擦だ。

中国は大きな市場を作るしかない

 中国の地方政府が直ぐに製造を諦めることはなさそうだ。短期的にはEU-中国間で合意を見る可能性はあるが、中長期の解決策は結局中国が自分で見つけるしかない。世界中に不当廉売商品をばらまくことを長く続けるのは無理だ。中国が見つけられる解決策は、製造量の調整ができないのであれば、中国で太陽光発電設備の大きな市場を作ることしかない。12年の中国での導入量は500万kWだが、そんな規模では全く不十分だ。

 時間がかかるが、その間、結局脅されたEU諸国が輸入量を維持することで被害者になるのだろうか。実はECには不当廉売以外に、中国政府は不当な補助金を太陽光パネルなどに出しているとの訴えも起こっており、昨年11月からECが調査を行っている。仮決定は8月7日までに行われる。これも黒の可能性が高い。またEUの被害が増えるのだろうか。それとも日本にも火の粉が飛んでくるのだろうか。

[特集] 日本のエネルギー政策を考える


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