発表文と同時にECの通商担当カレル・ドゥグヒュト委員が決定に関する長文のメモを発表している。その趣旨は次の通りだ。「仮課税の決定は中国側に交渉のインセンティブを明確に与えている。中国が8月までに応えなければ、税率は上昇する。ボールは中国側にある。保護主義ではなく、不公正な貿易に対しては欧州の産業を守るのがECの役割だ。ただ、友好的な解決を望んでいる。中国製太陽光パネルの本来あるべき価格は現在の欧州での販売価格より88%高くなるべきだ。中国は欧州シェアの80%以上を握っているが、世界需要の1.5倍の生産能力を持っている。公正な競争を保証し、国際貿易のルールを尊重するための決定だ」。
ドイツが恐れる中国政府の報復
ドイツが課税に強く反対し、ECの課税決定後に、レスラー大臣が「間違った決定」とコメントするのは、高級車の輸入に対する中国の報復を懸念しているからだ。メルセデス、BMW、フォルクスワーゲン・アウディ―の自動車メーカにとって中国市場は重要だ。BMWにとっては最大の市場が中国だし、フォルクスワーゲンは販売の30%を中国市場に依存している。
自動車以外にも、化学品、機械などドイツメーカの中国向け輸出は多い。EU27カ国の主要国との貿易額は表の通りだが、ドイツにとっても、中国は米国に次ぐ第2位の貿易相手国だ。輸出額が670億ユーロ、輸入額が770億ユーロある。
中国政府は影響力を行使できるマスコミを使い、ドイツの自動車メーカへの攻撃を今年になり行っている。変速機の欠陥を指摘されたフォルクスワーゲンは38万台のリコールを行うこととなり、他のメーカもインテリアに有害物質を含む材料を使っていると攻撃された。ドイツが課税に賛成すれば、どんな報復を受けるか十分想像できるやり方だ。
標的にされたワイン
フランスは報復の対象に
6月4日にECの決定が行われた翌日には中国政府は、欧州製ワインの不当廉売に関する調査を開始すると発表した。中国のワイン業界からEUワインは不当廉売されている、さらに補助金を受け取っているとの訴えがあったためとされているが、この決定は、相当に政治的に考えられたものだ。ワインは大きな金額の商品ではないが、輸出国は今回の課税に賛成した、フランス、イタリア、スペインが主だ。
EUからの香港を除く中国向けワイン輸出金額は、9億7800万ドルだが、フランスからの中国向けワイン輸出金額は7億ドルを超えており、EUの70%以上を占めている。フランスのワイン業界のEU域外輸出額は53億ドルであり、中国向け輸出が急増していることもあり、フランスのワイン業界にとっては、中国市場は重要な存在だ。特に、ボルドー産ワインの中国向け輸出は急増しており、今中国が最大の市場と言われている。