2024年4月19日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年8月13日

 そして、脅威は能力と意図から形成されるのであるから、中国の意図の理解は不可欠だ。中国が、日本に圧力をかけると決断した思考過程等を理解しなければ、対応を誤る可能性もある。

日本が抱える問題点
「平時の自衛権」

 最後に日本側の問題だ。有効に対処できれば、日本は震撼する必要はない。しかし、残念ながら、自衛隊は有効な対処ができないだろう。能力がないのではない。平時の自衛権が認められていないからだ。有事だと認定され、更に防衛出動が下令されなければ、自衛隊は軍事力として行動できない。現在は、法律の拡大解釈等によって、「警戒監視」等の軍事活動を行っている。

 実際には、防衛出動が下令されるまでの武器使用は「警察権」及び「自然権(正当防衛等)」に依らざるを得ない。しかし、警察権は、軍艦や公船には及ばない。海軍艦艇及び海監等の船舶には対処出来ないのだ。ならば、「正当防衛だ」と言うかもしれない。しかし、自然権はあくまで個人に属するものであって、本来、部隊としての対処は出来ない。

 日米が「共同作戦計画」を作成していると言う。しかし、日本の説明では、米軍と「共同作戦計画の研究」をしているに過ぎない。今は平時だからだ。米軍には「計画」であっても、日本には「研究」であって「計画」ではない。東日本大震災の捜索救難活動等において、日米共同が機能しなかったのはこのためだ。

 一方で、法的に認めていないのに、実際には言い訳をして自衛隊を使用するのでは、日本は「信用できない国」になってしまう。そして本当に苦しむのは現場である。対処が認められていないのに行動を命ぜられる指揮官は、何をどう解釈すれば何が出来るのか、常に苦慮しているのだ。

 日本は、まず足元を見直さなければ、中国に対して本当に震撼することになりかねない。

[特集] 中国軍事力の実像と虚像

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