しかし、2003年に初の駆逐艦とフリゲートの混合編成による訓練が実施され、海軍運用の意識の変化が明確になってきた。2009年の「遠洋航海訓練実施」宣言に代表されるように、現在の中国海軍はブルーウォーター・ネイビー(外洋海軍)を目指している。これに合わせて、中国海軍艦艇は大型化し、「中国版イージス」等の最新装備を整えつつある。そして、2012年9月25日には、初の空母を就役させた。新型の潜水艦も続々と就役している。艦艇の陣容だけを見れば、正に強力な近代海軍である。
いまだ解決されない「補給」問題
それでもなお、海軍の運用思想を取り入れて10年程度の中国海軍には問題もある。中でも、補給に関する問題は根深いようだ。
2010年には、中国人民解放軍が全国規模の補給演習を行うと大々的に報道したが、その後、演習の内容はおろか、演習を行ったという報道さえされなかった。一般に、惨憺たる結果に終わったために報道できなかったのではないか、と言われている。中国海軍にとっても、補給は大きな問題である。2012年12月6日の『新華社』等が、「東海艦隊が西太平洋において『総合補給訓練』を実施した」とわざわざ報道したのは、未だ、補給が特に重視すべき項目であることを示唆するものである。
興味深いのは、補給の問題の一つに「食事」が挙げられていることだ。2009年頃の中国海軍には、「中華料理を食べるから頻繁に補給が必要なのではないか」という議論があった。欧米の食事を学ぶべきだと言うのだ。しかし、この問題の解決は難しそうである。2004年の時点で、人民解放軍総後勤部の承認を経て「中華料理と洋食を結合し、製品化して提供する」ことを主とする飲食保障の新モデルが作られていた。更に、これ以前に数年をかけて、「海軍艦艇部隊飲食保障メニュー指南」、「海軍艦艇部隊中華料理洋食メニュー管理システム」、「海軍艦艇部隊飲食保障方法」等、6種類の基礎的研究が行われ、食品加工方法、機械設備の装備、遠洋航海用食品改良の3つの標準が定められている。
このことから、「中華料理が問題だ」という意識は2000年前後には共有されていたと考えられる。それが、現在に至るまで解決されたようには見えないのだ。2011年2月には、未だ「単一の食事構造を打破して中華料理と洋食の結合を進める」という報道がなされている。また、2013年5月の『解放軍報』は、「潜水艦乗員は、三日間熱い料理を食べていない」という内容の報道をしている。これが美談になっていること自体、現在でも食事が大きな問題であることを示唆している。