英エコノミスト誌6月3日号が、来年1月の台湾総統選挙について、米中対立のさなかにあっていかに台湾の進路の舵取りをするかを巡る争いになる、と報じている。要旨は次の通り。
台湾の次期総統は二つの超大国(米中)の対決の真っただ中で就任することになる。
野党・国民党は今回の総統選挙を「戦争か平和」の選択、与党・民進党は「民主主義か専制主義」の選択と言っている。台湾をいかに守るかについて、民進党は他の民主主義国と同盟を結ぶことを主張、国民党は中国共産党との話し合いを望んでいる。
今回は異例なことに、第三の政党、台湾民衆党の柯文哲も有力候補になるかもしれない。今や有権者の半数以上が民進党にも国民党にも属せず、20代の40%は中立を標榜している。
民進党の総統候補は頼清徳・副総統で、彼は支持率30%と世論調査でリードしているが、過去の発言に悩まされている。2017年に自らを「台湾独立派」と称し、中国を怒らせ米国に不安を与えた。彼はその後、発言内容を抑えているが、中国共産党は、民進党が政権を握る限り台湾への威嚇と孤立化の政策を止めないだろう。これは、「民進党は台湾の安全を脅かす」との国民党の批判を煽る。
国民党は自らのエスタブリッシュメントのイメージを覆してくれそうな人物を候補者に選んだ。穏やかで有能と言われる元警察官の侯友宜である。彼には台湾人らしさがある。
侯友宜の対中政策は今までのところ曖昧で一般論に終始している。選挙運動が始まれば、彼も自らの対中アプローチを明確にせざるを得なくなり、それは彼の勝利のチャンスを左右することになろう。
そして元台北市長で台湾民衆党を創った柯文哲がいる。選挙運動では対中関係ではなく内政問題に焦点を置き、人気を得ている。最近の世論調査では支持率は20%以上と、国民党の侯をわずかに下回るのみだ。
柯は有権者に対し、自分は対中挑発と対中抑止の間の「第三の選択肢」を提供すると言っているが、実際は彼の政策は国民党寄りだ。
台湾民衆党の人気は台湾選挙の予測を非常に難しくしている。世論調査では頼がトップで、侯と柯が2 位を争っている。侯と柯が手を組めば民進党の支配は覆るかもしれない。そうなれば、台湾海峡の緊張は表面的には緩和されるかもしれないが、それで中国の軍備増強や米中の競争が緩むことはないだろう。総統候補者たちは皆平和への道を約束するが、それは彼らの力の及ぶところではなく、結局は中国次第だ。
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総統選挙まであと半年に迫った台湾において、選挙戦は熾烈な状況を呈しつつある。上記エコノミスト誌の記事は民進党、国民党、民衆党のそれぞれの候補についての強み・弱みを論じたものであり、興味深いものとなっている。
台湾での総統選挙を控え、台湾海峡をめぐり、米中間の対立・確執はますます強まっているように見える。最近のブリンケン国務長官の中国訪問も、台湾海峡をめぐる米中の軍事的対立を緩和させる要因とはなっていないが、今後、半年間の間に米台関係にどのような変化を生み出すこととなるのか、要注目である。
現在、次期総統選の有力候補者としては、民進党・頼清徳、国民党・候友宜、民衆党・柯文哲の3名に絞られた。