台湾の総統選挙まであと半年あまりとなり、各政党の候補者が出揃い、総統選レースの構図は固まった。抜け出したと言えるような候補はおらず、情勢は混沌としており、今後中国の情報操作を含めた「認知戦」による介入の影響を心配する声も広がっている。
初めてと言える本格的な三つ巴
最も早く候補として確定した与党民進党の頼清徳・副総統のほか、野党国民党は、最大都市の新北市で市長を務める侯友宜氏を正式に候補とすることを決めた。一方、第三勢力の台湾民衆党の柯文哲・前台北市長も立候補をしていく構えで、4年に1度の台湾総統選は今回、基本的にこの三者の争いになりそうだ。
台風の目となっているのは柯文哲氏である。もともと台湾では二大政党である民進党・国民党の力が強く、第三勢力は議会で議席を多少は取れても、総統選では勝ち目がなかった。国民党系の勢力が分裂して2000年の総統選のように共倒れになるケースもあった。
台湾民衆党は、柯文哲氏の「個人商店」として始まった政党だが、若者や都市住民を中心に次第に勢力を拡大し、柯文哲氏は最新の世論調査でも20%台の支持率をキープしており、国民党の侯友宜氏より上位に来る調査も出てきている。
心配されるのが侯友宜氏だ。昨年11月の統一地方選では国民党は大躍進し、民進党は窮地に追い込まれた。そのなかで出馬を待望する声が集中したのが侯友宜氏だった。刑事畑で実績を上げ、警察出身らしい冷静なキャラクターが信頼され、市民の人気は高く、総統候補に推す声が高まっていった。
ところが、国民党が候補者をなかなか決めず、本人も出馬表明に踏み切れないなかで、鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者、郭台銘氏が出馬表明をしてしまうなど混乱に陥った。ようやく党中央が候補として正式に擁立を決めたが、すでに優柔不断さを疑問視する声もあって勢いが落ち、支持率では頼清徳氏に遅れを取っている。