2024年6月22日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年8月18日

 2023年7月17日付の米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」は、米国は、中国の中東への影響力増大に対して軍事的関与の強化で対応しようとしているが、中東諸国が抱えるガバナンスなどの社会経済問題に対応すべきであるというカーネギー平和財団のジェニファー・カヴァナとフレデリック・ウェーリの論文を掲載している。

(webking/ffikretow/gettyimages)

 中国がサウジアラビアとイランの仲介を行ったことは、中国の中東進出を示した。以来、米国は中東の同盟国に対する安全保障上の関与を強化している。しかし、アラブ側は、米国の軍事力を行使する意思を疑っている。他方、アラブ側は中国にドローンのような武器を期待し、さらに、中国は専制政治に寛容であり、域内の対立する勢力に分け隔てなく対応している。従って、米国は中東に対してこれまでと異なるアプローチを取る必要がある。

 米国は、中国の中東における役割を受け入れ、時代遅れの安全保障に偏った戦略ではなく、人的資源開発や教育といった分野での協力を強化すべきである。さらに、ブラジル、インド、日本のようなミドル・パワーとアラブ諸国との関係強化を支援すべきである。

 米国がこの地域の主導的な安全保障上のパートナーという立場は当面揺るぎない。中国の中東への武器輸出も5%以下に過ぎない。ただし、中国製武器は安価で、人権など条件を付けないので中東諸国はドローンや精密誘導ミサイルの様な先端兵器を中国から入手している。さらに、中国は、治安対策でも支援している。

 経済面では、中国は中東で米国以上のプレゼンスを有している。IMFによれば、過去十年、中東と中国との貿易は、中国製品の輸出と原油の輸入で40%伸びている。中国が中東諸国と自由貿易協定を結ぼうとしているのに対して、米国は関心を持っていない。

 米国が中東で再びプレゼンスを高めるためには、米国が唯一のパートナーである時代は終わったことを自覚しなければならない。バイデン政権は、中国の影響を排除しようとするべきではない。代わりに目に見える利益をもたらすような政治経済戦略を示す必要がある。経済の多角化、ガバナンス、気候変動のような重要な問題を扱うアラブ諸国、米国、その他の大国による小規模なパートナーシップの枠組みを作る必要がある。

 米国は中東内で高まっているより良いガバナンスや社会経済的な参加への要求を無視すべきではない。もちろん、米国が意味ある変化を起こすことに、専制的体制が抵抗するかもしれない。まずは、政治の透明性と社会福祉の向上から始め、さらに、市民のITへのアクセスや教育と職業訓練への支援も必要だろう。

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 2023年3月に中国がイランとサウジの関係回復を仲介してから数カ月が経ち、中東への中国の進出についての論評が散見される様になった。この論文を含め、米国の識者達は、米国は中国の進出に対抗するべきではなく、上手く利用するべきであると考えているようだ。


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