2024年5月1日(水)

教養としての中東情勢

2023年7月25日

 ロシアが黒海の穀物輸出合意から一方的に離脱した上、事実上、黒海を軍事封鎖して緊張が高まる中、国連とともに合意を仲介したトルコのエルドアン大統領の動向に世界の注目が集まっている。エルドアン氏は〝友人〟プーチン・ロシア大統領を8月にトルコへ招待しており、直談判で合意再建を目指したいところだが、「ロシアの復帰は極めて困難な状況だ」(米国務長官)。

オデーサでは、穀物貯蔵庫へもミサイル攻撃を受けており、軍事的にも緊張状態となっている(AP/アフロ)

離脱の直接の引き金

 ロシアが合意から離脱したのには伏線があった。ウクライナが昨年7月の合意から3300万トンの穀物を黒海経由で45カ国に輸出したのに対し、ロシアの農産物の輸出は伸びず、ロシア側には「国連が約束した輸出正常化が実現していない」(プーチン大統領)との不満と苛立ちが高まっていた。

 このためロシアは4月、要求をあらためて国連に突き付けた。主張が受け入れられなければ、合意延長(期限7月17日)に同意しない、という「最後通告」だった。要求は①ロシア農業銀行の国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」への復帰、②外国の保険、船舶会社によるロシアとの制限なき取引再開、③農業用備品の輸入容認、④ロシア肥料生産者への制裁解除――などが骨子だった。

 そんな中、17日未明、ロシア本土とクリミアをつなぐ重大な補給路である「クリミア橋」がウクライナ軍の無人小型ボートの攻撃を受け、爆発。一部が破壊される事件が発生した。

 ロシアは報復として、オデーサなど黒海沿岸のウクライナ港の穀物貯蔵庫や住宅をミサイルなどで連日攻撃し、船積みを待っていた何十万人分もの食料を焼失させた。橋への攻撃がロシアの合意離脱の直接の引き金になったのは間違いない。


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