2024年4月30日(火)

World Energy Watch

2023年7月21日

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以後、西側諸国がロシア包囲網を強める中、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」がアフリカ諸国で存在感を示し、ロシア政府も同社と連携し、アフリカ諸国で影響力を維持している。一方、23年6月のワグネルによるロシア政府・軍に対する反乱が、ワグネルの駐留するアフリカ各国の情勢や、ロシアの対アフリカ外交にどう影響を及ぼすかが注目される。

ワグネルは、アフリカ諸国の選挙での警護に参加するほど影響を及ぼす(ロイター/アフロ)

これまでのロシアとワグネルの関係性

 ワグネルとは、14年に設立されたロシア最大の民間軍事会社である。同社の設立には、ロシアの新興財閥(オリガルヒ)のエフゲニー・プリゴジンが関与し、彼はプーチン大統領との信頼関係をもとに外食事業の拡大に成功した実業家である。

 ワグネルは設立後まもなく、ウクライナ東部ドンバスに展開し、ウクライナ軍と対峙する親ロシア派民兵に加勢し、その後の活動地は中東やアフリカに広がった。各地での任務は、戦闘参加や作戦指揮のほか、情報収集・分析、軍事訓練の提供、軍事施設や資源採掘場の警備、要人の警護、そしてロシアの敵対勢力に対するプロパガンダ活動など、多岐にわたる。

 ワグネルの傭兵には、ロシア軍および警察出身者のほか、ロシア以外の国籍者も含まれる。ウクライナ保安庁(SBU)とウクライナ分析・安全保障センター(UCAS)が同社傭兵の個人情報を入手し国籍を特定したところ、ベラルーシや中央アジア諸国といった旧ソ連の独立国家共同体(CIS)の国々に加え、少数ながらバルカン諸国やシリアの出身者も確認された。

 ワグネルは単なる民間軍事会社でなく、事実上のロシア軍の別働部隊であると見なされてきた。フランス国際関係研究所(IFRI)が20年9月に発行した報告書によると、ロシア政府が紛争地にワグネルを投入する主な理由は、ロシア政府が民間会社形態のワグネルを紛争地に投入することで、国としての紛争介入を否定できるからだ。

 この背景には、ロシアが国際法違反や国連安全保障理事会の制裁対象をかいくぐる思惑があると考えられる。ロシア政府はワグネルが非国家主体であるという特性を最大限活用し、同社を隠れ蓑に紛争に介入し、自国の影響力や経済的利益の拡大を試みてきた。


新着記事

»もっと見る