過去、モザンビークでは、ワグネルが過激派掃討作戦で、森林地帯に潜む過激派からの攻撃に対応できず、わずか2カ月で同州からの撤退を余儀なくされ、その後に過激派がより顕在化した経緯がある。そして21年3月、日本も官民協調で融資したガス田開発の事業地近くまで過激派が進攻し、それ以降事業は中断したままだ。
現在、アフリカ各国の脆弱な治安当局だけでは過激派を抑えられない状況に達しており、ワグネル頼みという安直な方針が、欧米諸国や国連の関与を遠ざけるとともに、過激派勢力の地域的な伸長の引き金となっている。
ロシア・アフリカサミットに向けた外交
ロシア政府は、反旗を掲げたワグネルへの統制を強化したい構えであるが、同社の解体に踏み切るかは定かではない。これまでアフリカ駐留ワグネル傭兵の全てがウクライナ戦線に入っていない点を踏まえると、ロシア政府はワグネルをアフリカ各地に引き続き駐留させる方にメリットを見出していると言える。特にリビアは、ロシアにとって戦略上重要な国であり、ワグネルが掌握するリビア各地の空軍基地は、シリアとの地中海横断のロシア軍用機飛行ルートの要であるとともに、アフリカ進出への足場でもある。
アフリカでのワグネルの動向に関心が集まる中、第2回ロシア・アフリカサミットが7月27日と28日にサンクトペテルブルクで開催される。本サミットの目的は、政治、安全保障、経済、科学技術、文化など多岐の分野で、ロシアとアフリカ諸国の包括的かつ対等な協力関係を強化することである。第1回は19年10月にソチで開催され、45人の国家元首、2人の副大統領、109人の閣僚が出席した。
ロシア政府としては、国際的な孤立のイメージを払拭するため、第2回サミットに数多くの首脳の参加を希望している。そして、プーチン大統領が各国首脳と会談することで、ワグネル反乱を機にロシアの継続的なアフリカ関与を疑問視する彼らの不安を取り除き、連帯をより強めることを目指している。
アフリカ各国との友好関係は、アフリカ経済市場での販路拡大の上でも重要となる。現在、ロシアは戦費の増大や西側諸国の経済制裁の影響により、可能な限り財政基盤を強化する必要があるため、ワグネルを通じてアフリカ各国の天然資源の確保に加え、軍事兵器や小麦、農業用肥料などの輸出拡大を目論んでいる。この点より、第2回ロシア・アフリカサミットでは政治面だけでなく、ロシアの対アフリカ経済外交にも注目すべきである。