2024年7月21日(日)

21世紀の安全保障論

2023年8月10日

 また、島外避難に際しては、住民を迅速に避難させるため輸送手段が極めて重要となる。他方、島内避難であっても、島外からの物資補給などのために輸送手段が不可欠だ。

 島外避難と島内避難の双方に対応できる体制では輸送手段が必須となる。この輸送手段としては➀ 輸送事業者による輸送、② 自治体自らが保有する輸送手段による輸送、③ 防衛省および海上保安庁の輸送手段による輸送の三つがある。

 しかし、武力攻撃が迫り、または現に武力攻撃が発生した場合、自衛隊や海上保安庁の艦船や航空機は本来任務に使用されるため、住民の避難に割く余裕は少ない。また、現状では沖縄県や先島諸島の自治体が保有する輸送手段はほとんどない。

 輸送手段を輸送事業者に依存することとなるが、危険が予想される状況で民間の輸送事業者が確実に住民の避難に従事するか(できるか)は、保証できない。したがって今後は、より確実に使用できる輸送手段として自治体自らが輸送手段、特に比較的運用・維持・整備を行いやすい中・小型の輸送船艇を保有すべきだ。

国による主導的な取り組みは不可欠

 島外避難と島内避難の双方に対応できる体制を構築するためには、地下シェルターの整備、物資の備蓄、住民サービスの維持、自治体による輸送手段の保有などが必要になる。しかし、人的・財政的リソースが限られる沖縄県や先島諸島の自治体がこれらの措置を自力で行うことは不可能だ。

 本年7月末に先島諸島を訪れた松野官房長官に対して、地域の首長は地下シェルターの整備などに関する国の支援を強く要請している。しかし、そもそも国民保護は国の防衛における重要な課題であり、本来は国が主導的に取り組むべき案件だ。

 先島諸島に限らず、国民保護に関する国による主導的な取り組みは不十分だ。例えば、東京都や大阪府などの都市部の自治体は地下駅舎、地下街、地下道などを大規模地下緊急一時避難施設に指定しているが、そこには地下シェルターとして必要な防爆扉、空気清浄装置、物資の備蓄などは見られない。

 自治体には有事に関連する知見や情報が不足しがちであることを踏まえれば、国が有事に対応した地下シェルターの機能に関する基準を作成し、建設・施設整備費用を負担するなど、より主導的に取り組むべきであり、そのための国民保護法の改正も検討すべきであろう。

自助や共助の拡充・活性化を

 ただし、国の取り組みだけでは不十分だ。災害の多い日本では、防災には自助、共助、公助の三つの要素があることは良く理解されており、国や自治体による公助が全てをカバーできない中、自助と共助が重要と見做されている。これは有事における国民保護にも当てはまる。


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