尖閣諸島を巡る領土問題が起きたあと、日中関係は徐々に回復し、14~15年の「爆買い」へとつながった。まるで、あの反日デモは一体何だったのかというほど、彼らは日本旅行を熱望し、中国では手に入らないものを日本で買って帰ったのだが、では、今回のケースはどうかというと、先行きはかなり不透明だ。
「空気」を変えられるのか
まず、処理水放出問題にどのように決着をつけるのか、という課題がある。領土問題は徐々に下火となっていったが、処理水放出は今後30年続くと言われている。中国政府が国民の不満の捌け口として「日本」を利用し、この問題を外交カードとして使い続ければ、それをよいことに、国民の反日行動も続くだろう。
日本への迷惑電話をかけているのは、中国のごく一部の人々であり、中国中で行われているわけではないが、前述のように、社会の「空気」が日本に対して否定的なものであり続ければ、多くの人々はその雰囲気を敏感に察知して、訪日旅行にも行かなくなる。無用なトラブルなどを起こさないためだ。
前述のように、団体旅行がキャンセルになるだけでなく、個人旅行も「今は行かないほうが無難」という考えで、減少するだろう。中国政府が日本との関係を改善しようと動けば、国民の行動も収まるだろうが、対米問題、台湾有事、国内の経済悪化などの問題もあり、すぐに解決するとは考えにくい。
また、日本国内でも不穏な動きが起きている。東京都内の飲食店で、中国人に向けて「当店の食材はすべて福島県産です」という看板を出したことがSNSで物議を醸しており、その店の前で在日中国人が動画撮影などを行って、中国や日本のSNSで流しているのだ。こうした「目には目を」のようなことが増えていけば、さらに日中関係は悪化する。せっかく再開された団体旅行にも水を差すことになり、しばらくの間、海外旅行どころではなくなるだろう。