東京電力福島第一原発が処理水の海洋放出を開始したことを受け、中国政府は日本に対して猛抗議している。中国外務省は「状況を把握していない」としているが、中国の電話番号から福島県の飲食店などをはじめ、日本全国の処理水とは無関係の施設に嫌がらせの電話が相次いでいることは事実であり、日中関係は急速に冷え込んでいる。
北京の日本大使館では、外出の際に日本語を大きな声で話さないなど、在留邦人に注意を呼び掛けているが、8月10日に解禁になったばかりの訪日団体旅行もキャンセルが相次いでいることがわかり、4年ぶりにようやく再開に漕ぎつけたかと思われたインバウンドにも影響がじわじわと広がり始めている。
日本観光「熱望」が一気にしぼむ
中国メディアの報道によると、中国の旅行大手、携程集団(トリップ・ドットコム・グループ)や中国文化観光部が行った調査では、処理水放出が実施される前まで、9月の中秋節から国慶節にかけての大型連休(今年は9月29日~10月6日)の旅行先として検索ランキングの第1位は日本だった。
中国から日本への団体旅行客は1月のゼロコロナ終了後もなかなか解禁にならなかっただけに、8月11日に団体客の第1陣が来日したときには、日本でも大きく報道された。コロナ禍前、日本への中国人観光客は全外国人観光客の3分の1を占めていたため、観光業界では「爆買いが復活するか」と期待が高まっていた。
しかし、それからわずか2週間――。処理水の海洋放出が始まるとすぐ、中国での日本旅行に関する検索は急速に少なくなった。
現地メディアは「日本への団体旅行を予定している人が多かったが、一部でキャンセルしたり、申し込みを見合わせたりする人が出始めている」と報道している。現時点で、一部の団体旅行は予定通り出発する可能性もまだ残されているが、全体としての訪日旅行熱は一気にしぼんだ格好だ。