ここに再生可能エネルギー利権が生まれる余地がある。買い取り価格は毎年下がっていく。前年度までの買い取り価格で認可を受けた案件を保有している事業者は、太陽光発電事業を検討している第三者に案件を売却すれば、儲けることができる。設備を今年度申請する事業者が得られる買い取り価格は37.8円だが、昨年度認可を受けた事業者から案件を買えば、42円受け取れる。
このため、昨年度末申請ラッシュがあった。とにかく認可だけ受けようとする事業者がいたのだ。固定価格買い取り制度開始前の事業用太陽光発電設備は累計でも90万kWしかなかった。昨年7月の制度開始から申請が殺到した。その結果昨年度末、即ち今年3月末時点で認可済みの非住宅用太陽光案件は累計1868.1万kWにも達した。一挙に既設の20倍だ。一方、そのうち設置済みのものは70.6万kWしかない。工事に時間がかかるにせよ全体の5%にも届かない数字だ。中にはとりあえず高い買い取り価格で認可だけ受けようとした事業者がいたということだろう。
再生可能エネルギー利権だが、この買い取り価格を負担しているのは電気の消費者だ。事業者は制度を利用し、より大きい利益を得ることができるが、負担するのは消費者だ。負担額は地域により少し差があるが、平均すると今年度は1kWh当たり0.4円の見込みだ。その金額のなかに高い前年度価格を利用した事業者の利益額も含まれている。
数量と価格で買い取り量削減を目指す欧州
太陽光発電事業を開始する企業の多さに手を焼いた欧州では、参入を減らすために政策の見直しが行われた。イタリアは事業用太陽光発電設備からの買い取り数量に上限値を設けた。ドイツは買い取り価格を削減し、毎月減額する制度を採り入れた。今年の7月1日現在の買い取り価格は表の通りだ。買い取り価格は家庭用で日本の約半分、事業者用では日本の3分の1だ。これでも太陽光発電設備の設置は続いている。
ドイツの家庭用の電気料金は1kWh当たり28.50ユーロセント、産業用は15.10ユーロセントだ。固定価格買い取り制度に基づき電気を売却するよりも自分で使用するほうが有利だ。ただ、お日さま任せの太陽光発電では電気が必要な時にいつも発電できるとは限らない。蓄電装置がないと無理だ。ドイツ政府は今年5月から太陽光発電設備を設置する家庭で蓄電池を導入する場合には補助金を出す制度を導入した。不安定な電源からの電気が増えると送電線網に負担も掛かる。送電線の整備費用も必要だ。それを避けるためにはできるだけ自分で使って欲しいということだ。