2024年11月22日(金)

新しい〝付加価値〟最前線

2023年9月12日

3つめの鍵「設置」

 パナソニックは設備メーカーであり、実際の設置は建築会社が行う。作業を行うのは建築会社でも、その設備を作り上げたした者以上に、その設備を熟知していることはまずない。

設置の時は、このような似た配管を何本も繋ぐ。マニュアル本を読んだだけでは対応できそうもない

 このため、設置の実際、細かなノウハウを教えるための研修所を工場内に設けてある。工場が海外にあっても、設計者が国内に居れば対応はできないことはないが、効率が良い話だとは言えない。

 国内に工場があれば、このような時、勘所をレクチャーすることもできるし、必要に応じて現場に赴くこともできる。また顧客と工場を繋ぐ、営業マンのサポートもできる。つまり、サービスの自由度を格段に上げることができる。

 今回、ビル用マルチエアコンを例に挙げたが、業務用空調機器は基本的に同じ。コスト以外のメリットが強いため、民生用に先駆けて国内回帰を果たしたわけだ。

大泉という土地

 工場があるのは群馬県大泉町。ここはブラジル系、ペルー系、アジア系の移民が多いことでも知られる。エンタメ的にいうと移民グルメが楽しめる街だ。雑誌によると、ブラジル系移民が愛用するお店には、焼きたてのパン、ブロックもしくは厚切りの20〜30種類以上の部位に分けられた牛肉、種類豊富な豆類などが並ぶという。箸で食べやすい薄切りの肉が基本の日本とはかなり違う品揃えだ。

 どのくらい移民が多いか、数字で見ると、総人口約4万2000人の20%は移民だという。群馬県自体移民が多い県だが、それでも約3%。大泉町は、移民が並外れて多いことがわかる。

 これは高度成長期に工場を誘致したものの、バブル期、その工場での働き手が足らなくなったためだという。この時真っ先に白羽の矢が立ったのが日系人。ブラジル系の人が多いのは、それが原因だ。パナソニックのエアコンを支えるパーツメーカーなどで働いているという。

 一度、日本から出た人が、日本に帰り、日本を支える。そんな街で、日本から出たビジネスが、日本に帰り、日本を支える。回帰型ビジネスプランが上手く回っているのは、大泉という土地柄も影響しているのかもしれない。

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