2024年12月22日(日)

新しい〝付加価値〟最前線

2023年9月12日

(naotake/gettyimages)

世界のダイキンが「つくば」に新工場

 日本の賃金の低さがメディアを賑わしている。一方、海外で生産していたルームエアコンが、再び日本で生産を始めている。明確に語られないが、生産コストを追求して海外生産するメリットより、市場ニーズを、間を空けず満たすことができるリードタイムの短さなどのメリットが上回ったらしい。なんにせよ、今のどのメーカーも空調機の国内生産をどうやって回していくのかを、長期展望で考えている。

 ダイキン工業などは200億円を投資、2027年に茨城県つくば市に新工場を建てる。関西のダイキンが関東の拠点とするためとしている。民生用の場合、コストがすこぶる重要であり、国内で作るのはフラッグシップモデルを中心とする高級モデルだと推測していたが、安価モデルも日本で作りたいと意気込む。理由としては、夏の初めに集中するエアコンビジネスへの対応と、それのサポートが海外では間に合わないこと、また設備が新しいため日本生産でもコストを抑えることができるのが大きな要因だ。

 エアコンの夏商戦は7月の第1週の土日から始まる。理由はボーナスが支給されるためだ。エアコンの設置は早いに越したことはない。7月の半ばで1週間待ち、月の終わりだと2週間待ちになる年すらある。

 その年の夏の暑さにもよるが、7月頭に買いが集中する。お金に余裕がある人は、夏前に買ってしまう。夏ボーナスを待って買う人の多くは、安価モデル。人気モデルは、在庫がなくなる。当然、工場に追加生産を促すと、海外の場合、工場が頑張って1週間で生産したとしても、輸出業務と船旅で約3週間、店頭並ぶのは8月半ばになる。国内生産だと、輸出関連の時間が不要。7月の半ばに店頭へ並ぶ。要するに売り逃さないということだ。

ひと足先に国内回帰した業務用空調機器

パナソニック 大泉工場

 民生用エアコンは、今後、国内生産を背景に、競争がヒートアップすると思われるが、エアコンを含む業務用空調機器は、ひと足先に国内回帰を果たしている。

 群馬県にあるパナソニックの大泉工場もそうだ。ここでは、電気ヒートポンプエアコン(パッケージエアコン、ビル用マルチエアコン)、ガスヒートポンプエアコン、吸収式冷凍機などが生産されている。

 電気ヒートポンプエアコンというのは、ビルの天井に埋め込まれているエアコン。お馴染みだが、業務用と民生用で大きく違うのは室外機。一つの室外機で、複数の室内機に対応する。最近は、室外機こそ節電の肝と言われることが多いが、こちらはそのスペシャル・バージョン。ビルの屋上に立ち並ぶ室外機の能力は、驚くほど高性能だ。

 実は、これらも一時期は海外生産を日本に戻したパターンだ。室外機は、回帰前、日本・約1割 海外・約9割だったのが、回帰後は、日本・10割。室内機は、回帰前、日本・約3割 海外・約7割だったのが、回帰後は、日本・約9割 海外・約1割。

 信頼のジャパンメイドになり、顧客からの評判もとてもいいとのことだ。


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