2024年5月4日(土)

新しい〝付加価値〟最前線

2023年8月16日

全自動洗濯機 プレッテ AQW-VX14P (洗濯容量:14kg)

洗濯物は1人1日、1・5キロが目安

 洗濯機の対応容量は、今、最大はどれくらいか、ご存じだろうか。日本市場で売られているモデルの最大容量は、タテ型が14キロ、ドラム式は12キロだ。14キロのタテ型は、アクア社の1モデルだけなので、12キロが最大といってもいいかもしれない。

 洗濯物は1人1日、1・5キロが目安。中身はワイシャツ1枚、肌着1枚、トランクス1枚、綿パンツ1本、タオル2枚、靴下1足、パジャマ上下1組。1日の洗濯量は、カップルなら3キロ。子どもが2人いると6キロとなる。結構な量だ。

 そして洗濯は、毎日やりたくない家事の代表例。洗濯自体は洗濯機が頑張るとしても、干さなければならないし、取り込み、畳み、収納しなければならない。それだけならまだしも、ワイシャツ、ハンカチなどはアイロンをかけなければならない。特にアイロンは、それなりの重さがある上、台も出さなければならないので、実に面倒。これらは人手だ。まとめてやる方が、疲れはするが、効率もよい。

 一度、この過程のロボット化に挑戦した会社があったが、頓挫している。あまりに多様すぎて、対応できなかった。白衣、制服など、種類をしぼったトライもしていたが、それでも完成には至らなかった。

 令和の今、共稼ぎは当たり前。家事をするなら、土日にまとめてとなる。掃除、洗濯、作り置きの調理。中々の仕事ボリューム。2日のうち、半日、もしくは1日を家事デーとしている人も多いだろう。それ受け、巨大容量の洗濯機がちょっとしたブーム。いや、常識になりつつある。

 そして今年、洗濯機と冷蔵庫の販売を中心とする家電メーカー・アクアが、先年出した14キロに加え、16キロモデルを市場に出してきた。簡単に16キロというが12キロを標準と捉えると、25%増量。洗濯物が増えるとそれを洗う水も増える。開発の技術的難易度は高くなる。しかも他社がまだ14キロに追従してきていない。他社から4キロも多い16キロをなぜ出したのか、その真意をアクアに聞いてみた。

14キロ以上が欲しいという声に押された

全自動洗濯機 AQW-VB16P(洗濯容量:16kg)

 アクアの話は明確だった。「ユーザーの14キロ以上が欲しいという声に押されました。ただ『Prette(プレッテ。アクアの売れ筋モデルのペットネーム)』とは別に単独で出しています。理由は、プレッテの筐体は、12キロと、14キロは同じものを使っているからです(洗濯槽は、それぞれの容量に合わせ設計)。16キロを設計するには、完全新設計しなければならないので、時間も費用もかかるのです。このため海外で実績のあるハイアール(アクアの親会社)の16キロモデルを日本用に再設計、市場投入しました。日本はまだ14キロですが、世界には16キロ以上の容量の洗濯機を必要としている方がいて、それに対応しているからです」(アクア担当者)。

 アクアの親会社ハイアールは10年連続で、世界一の売り上げの白物家電メーカー。その品質、品揃えは世界でも定評がある。ラインナップには、16キロどころか、それ以上の容量のモデルもラインナップしている。市場投入しているということは、開発データはもとより、クレームデータもあるということ。市場の要求を逃さずに、いち早く投入することを重視するなら、使うべき手段の一つだ。

 日本は少子化だが、大家族で生活している国はいっぱいあるわけだ。世界No.1だと、色々なニーズに対応していなければならない。その中の一つが大容量洗濯機というわけだ。一番の顧客はアジア地区。中でもタイでのニーズが高いという。

これだけの容量だと、ラージサイズの毛布も楽々

 大容量を実現するためには、この重さを支える軸受、それを回す強トルクのモーターが最低でも必要となる。そうでないと、洗濯機の基本、撹拌することができない。書くと簡単そうだが、物理スペックを変えるのはとても大変。特に、軸受、モーターは、洗濯機の寿命に直結するためメーカーも念には念を入れる。

 加えて水流を起こし、洗濯物を上下、回転させるパルセーター、洗濯物とぶつかり、汚れをこそぐ、洗濯槽の内壁デザインなど、クリアしなければならないことが、山ほどある。しかし、実績モデルをベースに再設計すると、開発時間は、ものすごく短縮できる。グローバルメーカーの強みだ。


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