日本市場のために、どこを再設計するのか
「次の部分は、日本サイドで再設計したところです」。アクアが挙げてくれたのは、次の8点。
①日本の防水パン(洗濯機の下に置く防水用のトレイ)に設置できるように設置脚を新規設計
②液体洗剤・柔軟剤自動投入機能を搭載
③カビケア槽洗浄モード搭載による清潔仕様
④日本向けプログラム、コースを新規開発
⑤大容量の強水流洗濯にも耐え、耐久性を担保するように軸受け部分を強化
⑥ドア検知機能を強化して安全対策を強化
⑦外観デザインを日本向けに変更
⑧テストマーケティング的な位置づけもあり、日本には展開されていないシルバー系の本体色を採用
日本の家には必ずある「防水パン」は海外にはない。洗濯機を置くべきところにほぼ確実に設置されており、無視はできない。だが、海外モデルは床面直置き設計。この差異を埋めるために脚をもうけたわけだ。
「洗剤の自動投入機能」と「カビケア槽洗浄モード」は人気機能。洗剤の自動投入機能は目新しい機能だが、人気が高く、日本では段々、標準化しつつある。
日本向けにしかない「標準」プログラム
さて問題は「日本向けプログラム」だ。実は、日本以外のエリアで販売される洗濯機は「標準」というプログラムがない。あくまでも洗濯の原理に沿ったプログラムが搭載されているからだ。洗濯は衣類のケア。イロハのイは、衣類をその種類ごとに分け、洗濯することだ。このためプログラムは「コットン(綿)」「混紡」「シルク」「ウール」など、衣類種類ごとにプログラムが分かれている。このため、海外の人が初めて日本の洗濯機を使うときは、まず迷う。
実は、マニュアルを熟読しても「標準」コースに関する説明はない。使い方が書かれているだけ。だが、マニュアルに書かれている断片的な情報を集めると、「コットン、混紡」を同時に洗濯するプログラムと考えていいらしい。実際、この2つの選択条件はかなり似る。ただし、ユーザーの利便性を図りすぎ、基本を疎かにしている気もする。
しかし「コースの新開発」は、洗剤の新形態「ジェルボール」への対応のことだ。そして「軸受部分の補強」、「ドア検知機能」共に、家電の安全性をアップするためのものだ。
これらが、世界的に「最もハードルが高い」と言われる日本市場に適応するために必要なものだ。「多機能」「安全性」の付加はいかにも日本らしいが、理論的なところより、便利さを優先するのも日本らしい。英語の明確さに比べ、日本語は曖昧と言われるが、それを地で行くようなところがある。