にもかかわらず記者会見においては同社の孫波総経理は、投資者は国防発展に参与することができ、長期的な収益を享受できる、と得意顔である。
また奇妙なのは、株式発行をして大船集団と武船集団の設備や業務を買収すると書かれているが、もともとこの二社は中国重工の子会社であり、系列企業であることからも買収というよりはむしろ増資といったほうがいいのではないかということである。
ちなみにこの大船集団は、8月28日に習近平国家主席が大連を訪れた際に雨の中を濡れながら岸辺にある同社を視察したばかりであり、彼が空母遼寧を視察したことと合わせても中国自前の空母建造への強い意欲を窺うことができるだろう。(ちなみにこの時に雨も厭わず労働者たちとの記念撮影に快く応じた態度は親近感を抱かせ、ネットには多くの好意的なコメントがあふれた)
また武船集団といえば、8月31日と9月2日に相次いで1000トン級の海監巡視船を進水させたばかりであり、これで今年に入ってから同社が進水させた巡視船は4隻になった。
株式発行による市場からの資金調達は国防費に限りがある政府にとって願ったりかなったりの打ち出の小槌に違いない。しかし、だからといってそれが社説で述べられるような透明性や効率性が担保された軍需産業なるものが出現することになるとは思えない。
同社は10月18日に株主総会を予定しており、このA株発行やフュージビリティについての報告書、大船集団や武船集団の資産移転についての評決が行われることになっているという。少なくともこのような情報が公開されるだけでも進歩がみられると評価できようが、それが政府、特に国防面での透明性が増していると評価するには時期尚早であろう。
中国政府は近年、「軍民融合」なる概念を打ち出して国防のための資源や資金、技術を広く社会全体から募ろうと試みている。そしてそれは2000年代から導入され始めた国防動員やその一部である国民経済動員という戦争動員へのスキーム構築の大きな流れの中で主張されているのだ。市場経済と軍需産業との結びつきが強まる傾向は、国が庶民に対して動員と称して行う国防の義務強制においてだけでなく、株式市場という利益を介した経済活動でも深められることを示唆している。
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